読書
三か月がかりでやっと今、「日と月と刀」(上・下)を読了しました。 すさまじい小説でした。内容については何も書きません。読後感なんて、いったいいつ書けるようになるだろう。 帰国したら改めて上巻に戻り、またゆっくりゆっくり一頁ずつ読んでいこうと思…
日本から帰国するとしばらく寝たり起きたりの生活で本ばかり読んでいる。「将棋世界」バックナンバーの合間に読んだ本は次の通り。中上健次の生涯 エレクトラ作者: 高山文彦出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/11/14メディア: 単行本購入: 3人 クリック:…
平野啓一郎さんから「読んでみるといい」と薦められて、本書の存在を知った。 さっそく取り寄せて読んだ。二年半前に早稲田大学で、二日間にわたって行われた講義録である。いろいろな意味でじつに面白い本であった。リアル書店でどのくらい盛り上がっている…
会議には誰もが悩まされている。鈴木健は冒頭でこう書く。 できれば、この世から会議を一切なくしたい。 これだけで会議がうまくいくというコツを、「たった一つ」だけ伝授するというのがこの本の趣旨である。たった一つなので、薄い本になった。たった一つ…
文庫版で939ページにわたる大長編。この夏、いちばん時間をかけた本だった。読み進めるにつれフィジカルに身体の具合が悪くなっていき(少なくとも僕にとっては、そういうおそろしい力を持った本だった)、しばし中断してはまた読むというふうにして、最後まで…
司馬遼太郎作品はすべて僕の書架にある。いずれ時間ができれば「竜馬がゆく」「坂の上の雲」「翔ぶが如く」「街道をゆく」「項羽と劉邦」「花神」「菜の花の沖」あたりを手はじめに、ただひたすら再読しながら過ごしたいと思う。 この「歴史のなかの邂逅」は…
本書を読み終えて、現時点では渡辺明(23歳)という若き竜王だけが、「コンピュータと戦う」それも「一度限りではなく、コンピュータをも真剣に将棋を戦う相手と認識した上で、長期間、お互いに切磋琢磨しながら戦い続ける」という未来を、自分の人生における…
日本中を震撼させた衝撃の自決から37年―初めて明かされる「兵士」三島由紀夫の素顔 とオビにある。面白いノンフィクションで一気に最後まで読んでしまった。 1970年11月25日の事件の衝撃は小学校時代の鮮烈な記憶のひとコマではあるが、その背景についての知…
最近の特集の中では抜群に面白かった。 平和に見えるけど本当は、今急激に乱世になったといえるのではないでしょうか。 という吉本隆明の言葉が強く印象に残った。これは「日本の家族を蝕む"第二の敗戦"」という吉本隆明と内田樹の巻頭対談の中の吉本の言葉…
「われわれはみな外国人である」(野崎歓)を読んでいたら、「ジャン=フィリップ・トゥーサンの文章」という1994年に書かれたエッセイにこんなことが書かれていた。 東京大学教養学部の主催で開かれたシンポジウムの際、彼は自作『カメラ』の冒頭十行をすらす…
井上靖「利休の遺したもの」を聴いた。 気力充実の素晴らしい名講演だった。これまで聴いた講演の中でベストに近い。 話の内容から察するに「本覚坊遺文」完成を間近に行われたようだ。改めて「本覚坊遺文」を読んでみよう。長い年月をかけての大作の完成を…
よし今度は短編小説でなく長編にいこうと、力が湧いてはきたが、果たして最後までいけるだろうか。前から、まとまった時間が取れたら読もうと古書店で買い求めておいたドノソの「夜のみだらな鳥」。邪道かもしれないがラテンアメリカ文学はいつも解説(鼓直)…
音楽はどうにもこうにもからっきしダメなので、美術評論は読むのだが音楽評論だけは読まずに今日に至る。よって吉田秀和は絶対に読まないはずだったのだが、横浜逍遙亭がしばしばブログで盛んに勧めるので、音楽以外のエッセイや評論だけを全集から選んで三…
ナンシー関の「記憶スケッチアカデミー」の第二巻が角川文庫から出ているのを書店で見つけて買ってきた。一人で本を読みながら、声を上げてゲラゲラ笑ってしまうことなんてめったにないけど、記憶スケッチ・アカデミーを読むと、なぜかそうなる。記憶スケッ…
「中央公論」の「時評」欄を担当しはじめて半年が過ぎた。今回が七回目。 次号テーマは「ケータイ小説」ブームで書いてほしいとのリクエスト。 でも在米ゆえ「ケータイ小説」のサイトなんて一度ものぞいたこともないし、書籍化された「ケータイ小説」のベス…
おかしくて切ない、〈在宅〉小説誕生! というコピーで、家に居ることが好き、つまり〈在宅〉好きの僕は思わず注文。本が届いてすぐ一気にこの六篇の〈在宅〉短篇小説を読んだ。 中でも「ここが青山」「家においでよ」の二篇がとても印象に残った。 夫の会社…
本当に面白くて一気に読んだ。著者は1960年生まれ。僕と同年の生まれ。「1976年の猪木」に、高校生のとき、著者もきっと僕と同じように熱狂していたのだろう。 僕はプロレスや格闘技を見るのが好きだが、マニアというほどではない。プロレスについて何かを語…
「考える人」の最新号が充実していて面白い。 「目次」はこんな感じで、丸谷才一ロングインタビューがあり、村上春樹氏への15の質問がある。 川上弘美インタビューがあり、堀江敏幸とジュンパ・ラヒリの短篇も載っている。青山南と小野寺健と野崎歓と豊崎由…
平野啓一郎がこの三年間(パリ在住期間も含めて)文芸誌に発表してきた短編を集めた作品。発売と同時に取り寄せて読んだ。「スロー・リーディング」を心がけようと思い、一作ずつゆっくり読んでいたのでちょっと感想が遅くなった。彼のブログにこう書かれてい…
面白くて一気に読んだ。 この本を読むと、日本という国の「なりたち」が本当によくわかる。 何が起ころうが変わらない日本の「核」のようなものが、この本からは匂い立ってくる。 特捜検察vs.金融権力作者: 村山治出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2007…
だいたい忙しいときほど、どうしてもそのときにしなくていい別のことにはまってしまうものだが、いま「雪」を読んでいる。 「雪」の舞台は、90年代初頭のトルコの地方都市カルス。この小説を読みながらつくづく思うのは、日本に近いアジアと欧米までは、その…
新聞や雑誌やブログで「今年の三冊」というのを皆が選んでいるので、僕もやってみることにしよう。 夏休みの頃にも紹介したが、だんとつの第一位は、 わたしを離さないで作者: カズオイシグロ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/04/22メディア: 単行本購…
「インテリジェンス 武器なき戦争」(手嶋龍一・佐藤優共著)が面白い。著者二人が語り合う全編が刺激に満ちている。 なかでも本書の圧巻は、「日本はインテリジェンス能力を高めるべき」という意見で一致し、互いに敬意を表しあう二人のプロが、激しく火花を…
僕自身は米国の大学に留学した経験がない。 大学時代から強烈な留学願望があったが、経済的事情などなどで結局それは叶わなかった。米コンサルティング会社に入ってからは、「留学したつもり」で社内転籍に申し込みサンフランシスコオフィスで修行したりした…
今北純一さんの久しぶりの新刊が出た。 今北さんについては、「欧州の個人が持つ力強さの源泉」 http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/001740.html および、「対談 今北純一×梅田望夫「欧州の真の力強さとは何か」」 http://www.mochioumeda.com/archi…
「プレジデント」誌連載中から、単行本化を楽しみにしていた本。 届いてすぐ、面白くて一気に読んでしまった。 1994年から1997年まで長嶋茂雄監督を「黒衣の参謀」として支えた河田弘道を描くノンフィクション。長嶋茂雄と黒衣の参謀 Gファイル作者: 武田頼…
ジェイ・ルービンの「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽」が面白かった。 村上春樹は長い海外生活のあいだ、米国の大学で自著に関する講演や質疑をかなりこなし、海外のジャーナリストからの取材もけっこう受けていて、そういう英語をソースとする内容がいろいろ…
須賀敦子全集第一巻(河出文庫)の解説を池澤夏樹が書いていて、その中にこんな文章があった。 しばしば不幸に見舞われる人々がそれでもよりよく生きようとする姿に読む者は共感を覚える。そう言ってしまえば話は簡単に思えるが、このよりよく生きるという言葉…
「和」と「自然」の叡智・・・ アメリカに住んでいていちばん懐かしく思う「日本のいいところ」が凝縮している感じの雑誌なのかな。 http://cm.chuko.co.jp/~ckoron/ri-ku-u/ 編集長対談をブログ(http://d.hatena.ne.jp/Ri-ku-u/)で読んでいたら、 若いころ…
5月にこんなことを書いた。 http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060527 最近読んで感動したもの。「新潮」五月号に掲載されたリチャード・パワーズの村上春樹論、「ハルキ・ムラカミ━広域分散━自己鏡像化━地下世界━ニューロサイエンス流━魂シェアリング・…