Entries from 2007-07-02 to 1 day

今日の短編(18) 多和田葉子「海に落とした名前」

久しぶりの休暇中。 他者の悪夢の中に迷い込んだよう。 「記憶がない。自分の名前がみつからない。手がかりはポケットの中のレシートだけ。スーパー、本屋、ロシア式サウナ・・・・・・。」 という帯の文章からは、主人公の「落とした名前」を探す物語が始ま…

今日の短編(19) 井上靖「生きる」(「石濤」所収)

本を読んでばかりいる。 「孔子」にとりかかる直前、著者最晩年の日常を綴ったもの。食道がん手術後、無意識のうちに何度も発していた言葉は家族によれば、 地獄はあの世にはない。若しあるとすれば、この世にある。 だったと言う。 それから三年という歳月…

吉田秀和「小林秀雄」(吉田秀和全集10所収)

音楽はどうにもこうにもからっきしダメなので、美術評論は読むのだが音楽評論だけは読まずに今日に至る。よって吉田秀和は絶対に読まないはずだったのだが、横浜逍遙亭がしばしばブログで盛んに勧めるので、音楽以外のエッセイや評論だけを全集から選んで三…