知的生活と仕事のあり方

車谷長吉

車谷長吉「贋世捨人」 本は西行、鴨長明、吉田兼好、松尾芭蕉など、世捨てに生きた人の著作、及びその周辺の研究書であった。私の一番の関心は、これらの人がいかにして飯を喰うたか、ということにあった。世捨人になって飯を喰うて行くということそれ自体が…

山本七平著「小林秀雄の流儀」より

人がもし、自分の関心のあることにしか目を向けず、言いたいことしか言わず、書きたいことだけを書いて現実に生活していけたら、それはもっとも贅沢な生活だ。そういう生活をした人間がいたら、それは超一流の生活者であろう。もう四十年近い昔であろうか、…

ベルギーの「ヨーロッパ文芸翻訳家コレージュ」

ジャン=フィリップ・トゥーサン「セルフポートレート」あとがき(by 野崎歓) 「本書の翻訳作業を、訳者はまったく例外的と言うべき恵まれた条件のもとに進めることができた。」 「ベルギーに「ヨーロッパ文芸翻訳家コレージュ」という施設があって、そこに200…

ノルウェイの出版システム

「「新潮」百年を祝して」(水村美苗、「新潮」2004年1月号) 社会主義的側面の強いノルウェイでは政府が毎回文学書の千部を買い上げ、図書館に寄付する。(人口四百万人のノルウェイの千部は、人口比で、日本の三万部に相当する。) また政府の介入を極端に嫌う…

森有正・思索の体系化より形成や実践のプロセス

森有正エッセイ集成3「解説」(by 安藤宏)より 「僕は、個人的な反省あるいは感想という形でものを書くのが一番妥当しているし、また無難だと思っている。」(12-13頁)と宣言し、あえてエッセイを通してその道のりが語られて行くのもおそらくはそれに深く関わ…

渡辺一夫の仕事の仕方について

渡辺一夫「狂気について」(岩波文庫)の清水徹による解題から。 いまにして思うと、これらの著作の構想は、あのころ次第に先生の頭のなかに熟していたのだろう。なお、これはフランスから帰国後、筆者がたまたま聞いた著者の言葉によると、著者は調査をすすめ…