Entries from 2004-12-05 to 1 day

中野孝次の人生

著者に会いたい「中野孝次」 「60歳になったら閑暇の生活に入れ」を15年前倒しにして、それからの30余年を淡々と過ごし、 「僕は今年七十八歳になった。(略) その長い一生を思い返してみて、本当にいま自分のものとして残っているのは、若い時から好き…

村上春樹のスタイル

僕は2002年10月29日の日記にこんなことを書いた。

「モンテーニュ私記 よく生き、よく死ぬために」(保苅瑞穂著)

著者は「エセー」p784から「私はいっさいの努力を傾けて自分の生活を作って来たのです。それが私の仕事であり、作品なのです。私はほかのどんな仕事の作り手でもありませんが、それ以上に本の作り手ではないのです。」という部分などを引用して、こう書く。 …

小林秀雄の「近代絵画」について

小林秀雄全作品22「近代絵画」・巻末の中村光夫「小林秀雄論」 氏はこの三百頁の書物を一冊書くために、あしかけ五年の歳月を費し、その間ほかの仕事はほとんどしませんでした。 「モオツァルト」や「ゴッホの手紙」は、氏自身が気付いている「悪条件」のな…

森有正

森有正「生きることと考えること」 きわめてあたりまえのことですが、自分を越えた、他のものを探求していっても、結果としては、それは自分自身の探求になるわけです。フランス人というのは何かを求めていますが、その何かとは、自分自身なのです。それはモ…

寡作

水村美苗『本格小説(上・下)』特別インタビュー 私は作家になったのが遅く、だらだらと無駄な人生を歩んできた、小説の執筆に役立たない捨て札ばかりの人生を歩んできた、とずっとそう思っていたんです。それが『本格小説』を書いているうちに、捨て札があ…

発酵

森有正エッセイ集成1所収「流れのほとりにて」より そして今僕の心には、アンリ・ファーブルの言葉がしきりにきこえて来る。「私の生涯は殆んど全部、特に最後の三十年間というものは、絶対的隠退と完全な沈黙との中に過されたからである」(ルグロ著「ファー…

若島正

若島正「乱視読者の帰還」あとがき 十歳のころ、詰将棋という麻薬にとりつかれた。二十歳くらいまでは、数学に熱中し、数学者になることだけを夢見ていた。二十歳のころに、初めてペーパーバックで小説を読むおもしろさを知った。さらに三十歳のころ、ナボコ…

車谷長吉

車谷長吉「贋世捨人」 本は西行、鴨長明、吉田兼好、松尾芭蕉など、世捨てに生きた人の著作、及びその周辺の研究書であった。私の一番の関心は、これらの人がいかにして飯を喰うたか、ということにあった。世捨人になって飯を喰うて行くということそれ自体が…

山本七平著「小林秀雄の流儀」より

人がもし、自分の関心のあることにしか目を向けず、言いたいことしか言わず、書きたいことだけを書いて現実に生活していけたら、それはもっとも贅沢な生活だ。そういう生活をした人間がいたら、それは超一流の生活者であろう。もう四十年近い昔であろうか、…

ベルギーの「ヨーロッパ文芸翻訳家コレージュ」

ジャン=フィリップ・トゥーサン「セルフポートレート」あとがき(by 野崎歓) 「本書の翻訳作業を、訳者はまったく例外的と言うべき恵まれた条件のもとに進めることができた。」 「ベルギーに「ヨーロッパ文芸翻訳家コレージュ」という施設があって、そこに200…

ノルウェイの出版システム

「「新潮」百年を祝して」(水村美苗、「新潮」2004年1月号) 社会主義的側面の強いノルウェイでは政府が毎回文学書の千部を買い上げ、図書館に寄付する。(人口四百万人のノルウェイの千部は、人口比で、日本の三万部に相当する。) また政府の介入を極端に嫌う…

青木雄二

青木雄二「罪と罰 ナニワ人生学」(1997年6月に書かれた) ワシは人生の勝利者として、マンガを卒業するのである。 「卒業して、これから、なにするんや?」 みんな、それを聴くわい。 すでに”勝ち”を手にしたワシは、もはやなにをする必要もない。しばらくはな…

森有正・思索の体系化より形成や実践のプロセス

森有正エッセイ集成3「解説」(by 安藤宏)より 「僕は、個人的な反省あるいは感想という形でものを書くのが一番妥当しているし、また無難だと思っている。」(12-13頁)と宣言し、あえてエッセイを通してその道のりが語られて行くのもおそらくはそれに深く関わ…

渡辺一夫の仕事の仕方について

渡辺一夫「狂気について」(岩波文庫)の清水徹による解題から。 いまにして思うと、これらの著作の構想は、あのころ次第に先生の頭のなかに熟していたのだろう。なお、これはフランスから帰国後、筆者がたまたま聞いた著者の言葉によると、著者は調査をすすめ…

雑誌・新聞アーカイブの充実状況について

Business Week 10/16/95から Fast Company 93年創刊準備号と95/11創刊号から Business 2.0 1998年8月から Economist 2000年1月から Fortune 2002年1月から Technology Review 1997年1月から Strategy+Business 1995Q4から Wired 1993年4月創刊号から Forbes …