森有正・思索の体系化より形成や実践のプロセス

森有正エッセイ集成3「解説」(by 安藤宏)より

「僕は、個人的な反省あるいは感想という形でものを書くのが一番妥当しているし、また無難だと思っている。」(12-13頁)と宣言し、あえてエッセイを通してその道のりが語られて行くのもおそらくはそれに深く関わっている。思索の体系化を待たずに彼が逝去したことを惜しむ声も多いが、その見方が必ずしもあたっているとは限らない。彼の「思想」を一個の完成体としてどのように受け取るかではなく、その形成や実践のプロセスに、われわれがいかにして立ち会うかが問題なのだ。