ノルウェイの出版システム

「「新潮」百年を祝して」(水村美苗、「新潮」2004年1月号)

社会主義的側面の強いノルウェイでは政府が毎回文学書の千部を買い上げ、図書館に寄付する。(人口四百万人のノルウェイの千部は、人口比で、日本の三万部に相当する。) また政府の介入を極端に嫌う資本主義的なアメリカでは、中小出版社は運営費用の65%を企業の寄付金などでまかない、大出版社がリスクをとらない本を出版しようとする。ところがわが日本には文芸誌がある。大手の文芸出版社が利潤の一部を文芸誌に回し、小説家に書く場を与え、原稿料を支払い、政府の援助や企業の寄付金の代わりを担ってくれているのである。