佐藤優の獄中での知的生活

「獄中記」(佐藤優著)を読書中。

拘置所内での生活は、中世の修道院のようです。中世の修道院や大学では、書籍は一冊しか所持することが認められず、それを完全に習得するか、書き写した後に次の本が与えられるシステムだったそうです。拘置所もそれにかなり近いところがあります。私本については三冊しか房内所持が認められていません。(中略) 案外、現在の環境で少数の本を深く読む生活も気に入っています。(中略) 禁固刑ならば、書籍の差し入れと筆記具の使用が認められるとの条件の下で、何年でも耐えられるような気がします。(p40)

私本三冊、宗教経典・教育用図書七冊、パンフレット十冊の枠を効率的に活用し、いかに知的世界を構築するかというのも面白い作業です。(p46)

拘置所生活も自分でリズムを作ってしまうと、それなりに楽しいです。過去数年間、否、十年以上にわたって、腰を据えてしたかったけれども、時間に追われ、できなかった勉強をするよい機会です。(中略)
外に出て、将来家を建てることになったら、東京拘置所の独房にそっくりの小部屋を作り、思索と集中学習用の特別室にしたいと考えています。それくらい現在の生活が気に入っているということです。(p63-64)

おそらく、「拘置所は学習と鍛錬の場」と自分で決めてしまったからでしょう。食事もおいしく、集中して勉強できる現在の生活を私は心底楽しんでいます。保釈の必要ありませんし、接見禁止が続いていたほうが会いたくもない面会希望者との会見を断り、気まずい関係になるよりもずっとよいです。(p69)

この制約をどのようにして利点に転換するかをよく考える。恐らく、記憶力、構想力の強化ということになると思うが・・・。しかし中世、近世と較べれば、文明の恩恵に浴している。紙もほぼ無制限に使えるし、図書も十分に入手できる。ボールペンという文明の利器もあり、夜は電灯の下で勉強できる。概ね、戦前の学者よりも恵まれた環境にあると見てよい(特にボールペンの点で)。(p82)

ある意味で、拘置所内での生活は、夏目漱石の「それから」における代助、「こころ」における先生のような「高等遊民」の世界に似ていると思います。(p112)

獄中記

獄中記