村上春樹の生活: 仕事は朝

意味がなければスイングはない

意味がなければスイングはない

二ヶ月ばかり日本を離れて、外国のとある僻地にこもってこつこつと小説を書いていた。そういうときはだいたいいつも夜明け前に起きて、午前中詰めて仕事をし、午後はのんびり運動をしたり、音楽を聴いたり、本を読んだりする。小説を書くというのは、一種の非現実な行為なので(もちろん僕の場合は、ということですが)、ある時期日常をきっぱりと離れることがどうしても必要になる。
こういう時期は本を読むのに最適なので、これまで時間がなくて読みそびれていた本をまとめてバッグに詰めていく。(p135)

ロンドンに滞在していたその一ヶ月のあいだ、(中略) 朝早く起きて集中して小説を書き、書き疲れると午後の散歩をし、喫茶店で紅茶を飲みながら読書にふけり、日が暮れると上着を着て音楽を聴きに行った。(p221)

プーランクが朝にしか作曲の作業をしなかったという事実を本で読んで知ったのは、ずっとあとになってからだ。彼は一貫して朝の光の中でしか音楽を作らなかった。それを読んだとき、やっぱりなと僕は深く納得した。(中略) 僕も朝にしか仕事をしない。だいたい午前四時から五時のあいだに起きて、十時頃まで机に向かって集中して文章を書く。日が落ちたらよほどのことがない限り一切仕事をしない。(p222)