吉田正和アマ名人(奨励会初段受験中)のブログ

あるはてなユーザーから、あるエントリーに、1ポイントの投げ銭をいただいた。投げ銭自身に意味はなく、コメント欄をメール機能として使い、将棋好きの僕に「吉田アマ名人のブログの文章が大好きなので、是非読んだらどう?」と教えてくれたのだった。
「masakazuの将棋日記: 富山県に住んで慶応大学将棋部で腕を磨き奨励会を目指してます」
http://blog.goo.ne.jp/masakazuin24h
滅法将棋の強い19歳で、朝日アマ名人になり、その後の朝日オープンではプロ相手に三連勝(阪口、浦野、有吉)してその勝負強さをアピールした。アマ名人になったときの発言が個性的でそれも話題になった。「勝手に将棋トピックス」の「新朝日アマ名人の吉田正和氏」
http://d.hatena.ne.jp/mozuyama/20050517/P20050517ASAHIAMA
にその経緯が詳しく書かれている。今、奨励会初段受験中(二連勝中、あと一勝で合格)である。
優等生棋士が多くなった今、こういう新しい個性に強く惹かれる。強気、自信、自負、焦燥、不安が日々交錯する将棋一筋のこの日記を通読し、ますます彼を応援したくなった。親がかりで将棋界を目指す頭が抜群にいい優等生たちとは全く違う無頼の匂いも漂う。
日記のタイトルに「富山県に住んで」とある。てっきり富山県出身と思いきや、彼は埼玉県出身で、富山で一人暮らしをしながら将棋修業の日々を送っている。その理由が面白い。

埼玉県出身で2004年7月から富山県で一人暮らしをしてます。
富山にしたのは東京と大阪から遠いようで近い微妙な距離も大きいですが、北陸3県に住むと高額の賞金大会に出られるというのが決め手でした。

マチュア将棋大会での賞金額から、富山に住むことを決めたというのである。そして富山に引越してから一年がたった日の日記にはこうある。

富山に来て1年が経ちました。一人暮らしをして良かったところは24時間いつでも気が向いた時に将棋の勉強が出来ることです。1年で外泊が161泊ありました。自由に好きなところに行けるようになって勝つのも負けるのも自己責任になり、大会でまじめに指すようになったのも大きいです。あまりにも強くなってレベルが違いすぎてトラブルが増えたので最近は全く将棋を指していません。最近は将棋より囲碁です。ゲーム性や棋力、目標等の違いで囲碁は疲れがとれます。将棋に悪い影響を与えない程度にこれからも囲碁は打ちます。私のレベルについてこれる人がいたら将棋を指すためだけにどこにでも行きますが、ほとんどいないのが現実です。

こういうふうに彼は、強烈な自信を自然に表現する。そして大切な勝負に負けたり、勝っても将棋の内容が悪いとショックを受け、彼は泣く。
棋士・有吉道夫に勝ったあとも、彼はぜんぜん嬉しがらない。

朝日ベスト128の有吉九段戦は先手だったので予想通り角変わり腰掛銀になりましたが64角を先手で打たれてひどいことになりました。後手にのみ打開の権利がありましたが千日手になりました。有吉先生の好意による千日手だと思いましたが真相はわかりません。

思ったことをそのまま口にし、また書く。そういう純粋さが、名人就任インタビューのような場でストレートに言葉になるから、個性的というややネガティブな評価を日本社会は下そうとするわけだが、ファンが興奮できる個性的キャラクターの登場を、我々将棋ファンは大いに喜ぶべきであろう。
マチュア枠での参加でありながら、彼はプロ相手の三連勝では満足しない。ベスト128、ベスト64、ベスト32・・・と、数を勘定しながら、羽生四冠への挑戦を本気で目指していたことがよくわかる。そしてそのことをちゃんと書く。

挑戦まであと6連勝が必要で次のベスト32からシード選手の登場であり、厳しいと思いましたが、予選落ちでは何をしているのかわかりません。

9月9日の奨励会試験2日目で彼はきっとすんなりと合格するだろう。そしてプロを目指すことになろう。「将棋世界」9月号で、吉田と同世代だが吉田とは全く異なる「将棋の王道」を歩んできた将棋エリート・渡辺明竜王は吉田将棋についてこう語る。

多分、三段まではあっという間ですよ。今の初段や二段の子には悪いけど、三段まで一敗するかどうか。これだけ力があれば。だけど、三段リーグを簡単に抜けられるとは思わない。今はアマチュアだから騒がれているけど、三段リーグに入ったら若いほうじゃないでしょ。目立たなくなっちゃうかもしれない。

いずれ渡辺・吉田がタイトルを争う好敵手になる日がやって来るのだろうか。