「ウェブ時代 5つの定理」制作秘話と感想

2月27日刊行の新著「ウェブ時代 5つの定理」の文藝春秋・特設サイトができました。トップページに、2分ほどの短い音声メッセージを用意しましたので、是非聞いてみてください。

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!


この本は面白い仕事の仕方で作った本なので、そのプロセスをきちんと言葉にしておこうということで、制作秘話というページが用意されました。担当編集者の山本浩貴さんと編集ライターの阿部久美子さんの文章が掲載されています。まずは山本さんの文章から。

その第一段階、ビジョナリーたちの名言の選定と大まかな構成作業を、なんとすべてウェブ上で――「はてな」のワークスペースで行うと、梅田さんは指示してきたのである。
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この作業を開始するにあたって梅田さんが最初にアップした文章は「オプティミズムのシャワーを浴びた日々」というものだ。この本をつらぬくコンセプトの力強い宣言だった。
「不確実なもの(未来)を肯定的に断定しそれを前提に行動せよ。明るい前向きな言葉をシャワーのように浴びながら、その言葉が正しかったんだという事実を近未来史の中で突きつけられ続けてきた、そして今度は自分もそういう言葉を発したいなと思い――そういう言葉を発したり受けたりしながら長い期間生きることがどれほど精神的によいのかを、読者に伝えたい。それが、ぼくがシリコンバレーで身につけた『大人の流儀』なんだ」
期待に胸が高鳴った。だがここから、紙ベースの作業に慣れきったぼくらには想像を絶する難作業が待ち受けていた。
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ところがウェブの情報量に際限はない。梅田さんは昼夜を問わず長年温めてきた名言から最新のビジョナリーの知見まで、論文や記事やインタビューの抜粋などをすさまじい勢いでアップしはじめた。しかも、そのほとんどは英文である。さらにその名言に対する知見や思考のフックとなるビジョンが日々書き加えられていく。
それらに日々目を通しフィードバックするのは、相当ハードで、でも楽しい作業になった。
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そして阿部さんの文章「「質問によって走らせる」本づくり」から。

梅田さんは、「問う人」だ。
通常、著者は今回の本で何を表現したいかを熱く主張する。
私たち編集サイドは聞き役に回ることが多い。ところが、梅田さんは違った。ディスカッション中、頻繁に質問をする。
「あなたは実名を出してそれを書ける?」「その抵抗感はどうすればなくせるんだろう?」「なぜそこに違和感を覚えるのだろうか?」という具合に……。
しかも、それに対するこちらの答えを否定しない。著者なのだから、意にそぐわない点は否定して、自分はこういう本にしたいのだと喝破してくれていいのだ。が、終始笑みを浮かべながら聞き、対話し、そして問う、また問う……。
 そのうち、ふと気がついた。梅田さんが答えを欲しているのではないことに。
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全文は文藝春秋サイトでどうぞ。
ところでこの本は、僕が「いつか書きたい」と漠然と思っていたことが形になったものです。僕はたくさんの本を量産するタイプではなく、一冊一冊おそろしく時間をかけるので、「ウェブ進化論」が売れ出して、たくさんの出版社から依頼が殺到したときには、もう既にしていた約束を果たすだけで精一杯だったので、新しい依頼をすべて断らざるを得ませんでした。
一人だけの例外が、「まえがき」にも登場した文藝春秋の山本浩貴さん(1976年生まれ)でした。彼は20代半ばで齋藤孝さんの「三色ボールペンで読む日本語」というベストセラーを作ったというトラックレコードを持つ、優秀でセンスのいい編集者でした。彼とはメールをもらうまで、まったく面識がありませんでしたが、メールの文面が、明らかに他の人たちとは違った光彩を放っていたため、一度電話で話し、そして会ってみることになりました。そこから先の話は、彼の文章に書かれている通りです。
この二年間、モノを書くことを最優先に時間を使ってきましたが、この三月末を期に、書く仕事はしばらくスローダウンして別のことに時間を使います。「ウェブ進化論」以来、濃密し凝縮した時間を過ごしたので、書き下ろし作品として、四十代でできることはすべてやったかな、この三冊でいいかな、という気持ちでいます。
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書) ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書) ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!