青木雄二

青木雄二罪と罰 ナニワ人生学」(1997年6月に書かれた)

ワシは人生の勝利者として、マンガを卒業するのである。
「卒業して、これから、なにするんや?」
みんな、それを聴くわい。
すでに”勝ち”を手にしたワシは、もはやなにをする必要もない。しばらくはなんにもせずに過ごすつもりや。起きたいときに起きて、飲みたいときに酒を飲む。
昼間は公園かなんか行って、ベンチでボーッと座ってる。
「リンゴはなんで木から落ちるんやろ」
そんなことを一日中考えて過ごすんや。そういうふうになんにもしないことが、人生の最終的な贅沢やと思う。人生というギャンブルの勝利者であるワシは、当分のあいだ勝利の美酒をゆっくり味わいたいと思っている。(p205)

やっぱり、勝ったからには、ちゃんとその勝利を味わいたい。人生というギャンブルで勝ったワシは、マンガ家を卒業して、勝利のゼニで、人生を存分に楽しむのである。
どや、最高のエンディングやないか。
最後に残るのは、勝利の満足と充実感なのである。これは勝利者に許された特権や。(p206)

青木雄二はこう書いた6年後、2003年9月に逝去した。