寡作

水村美苗『本格小説(上・下)』特別インタビュー

私は作家になったのが遅く、だらだらと無駄な人生を歩んできた、小説の執筆に役立たない捨て札ばかりの人生を歩んできた、とずっとそう思っていたんです。それが『本格小説』を書いているうちに、捨て札があれよあれよとすべて生き札となったの。大変な歓びがありました。

――最後に、今後の活動についてお聞かせください。これまでの作品には五年以上の歳月を費やされていますが。
 それは幸い沢山書かなくても食べられるから。食べられさえすれば、自分の書きたいものを書きたい速さで書くのが理想的です。量産する能力もないけれど、そもそも量産する気がないの。