A Conversation with World Chess Champion, Garry Kasparov

Harvard Business Review誌4月号「Strategic Intensity: A Conversation with World Chess Champion Garry Kasparov」
http://harvardbusinessonline.hbsp.harvard.edu/b02/en/common/item_detail.jhtml?id=R0504B
の翻訳をDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー誌7月号で読んだ。面白い。
まずカスパロフは、人間の直感力の重要性を強調する。

いくら論理的思考や知的能力を使うといっても、最終的に指し手を決めるのは想像力や感覚なのです。つまり我々は直感で指しているのです。(略)
私は現在、

Garry Kasparov on My Great Predecessors Part 1

Garry Kasparov on My Great Predecessors Part 1

という全五巻の本を執筆中で、このなかで過去二百年間の偉大なチェス・プレイヤーの対局をたどり、詳しく分析を試みています。
その過程で私は、彼らの対局内容をコンピュータで分析し、その結果、おもしろいことを発見しました。彼らの独創的な妙手の多くは、追いつめられて直感を頼りに指したものだったのです。

ところで、カスパロフが執筆中のこの本を、若島正氏は激賞している。
http://www.wombat.zaq.ne.jp/propara/diary/200412.html

カスパロフに、そしてチェスというものに、激しく嫉妬する書物である。すべての将棋関係者は、この書物に匹敵するようなものを将棋がこれまでに生み出したかどうか、真剣に考える必要があるだろう。将棋は日本文化ですとお題目のように唱えるだけでは、文化でもなんでもない。これだけの書物を残せるかどうか、それが文化というものではないか。目下のところ、彼我の差はあまりにも大きい。

チェスを知らないからこの本の凄さがわからず残念だ。
さて、もう一つ面白かったのは、22歳で世界チャンピオンになったとき、カスパロフは祝賀会で先輩チェス・チャンピオンの夫人から「かわいそうなガルリ」と呼びかけられる。早くに人生のピークに立った「チャンピオンのジレンマ」を指摘されたわけだ。そのときには何のことかわからなかったカスパロフも、後にこの女性の一言の意味を理解する。

それまで追い求めてきた夢をすべてかなえ、そのうえ夢にも思わなかったことまでも成し遂げた場合、人はどこに向かって進めばよいのでしょうか。(略)
しかし、この問題を解決する唯一の方法は、結局のところたった一つしかないでしょう。つまり、ライバルに恵まれること、これに尽きます。

カスパロフは、自分がCEOの誰に似ているかと問われればスティーブ・ジョブズだと答えている。「空想家」であるところが自分と似ていると感じるのだそうである。カスパロフの今については、

2005年、「チェスの世界で現実的な目標が見えなくなった」として引退。今後は公式試合には出場せず、非公式な対局や執筆活動に専念する。

とある。