進化する大盤解説会、そしてその中継の可能性

いよいよ明日から高野山金剛峯寺での名人戦第四局ですね。設営も大変だろうなあ。ネット中継が楽しみです。
連休明けの第三局は、日本出張のついでに福山まで行こうと思っていたのですが、三月に東京で体調を崩してキャンセルしてしまった予定を五月にこなさなければならなくなったので、福山行きは断念。その代わりに夜だけ、毎日ホールで行われた大盤解説会に行きました。対局場に付随して行われる大盤解説会以外最近行ったことがなかったので、その進化に驚きました。
「大盤の大きな駒を手で操作して動かす」「変化手順をどんどん動かすと本局面に戻すのが一苦労」という制約がある旧来の大盤解説会に比べて、PCをプロジェクタに接続しての大盤解説会は、圧倒的な情報量で、それはそれは素晴らしいものでした。解説担当は西尾明五段でしたが、彼が局面を見て頭に浮かぶ手、そして将棋における思考プロセスが、ビジュアルに大画面に再現されるのは圧巻でした。
西尾五段が指し手を示す符号を次々に速射砲のように話すのを、PC操作役の奨励会・田嶋三段が受けて、PCソフト上で駒を動かしていきます。ときには詰みがあるかないかまでどんどん二十手以上動かしていきながらも、PCなら瞬時に元の局面や途中の局面に戻せるので、そこからまた別の変化をがんがん解説していくことができるわけです。
対局終了後に敗着と結論づけられた郷田九段の▲7八玉についても、リアルタイムで、▲5七桂なら先手勝ちだったはずと、詳細手順をすらすらと示していたのは、特に圧巻で素晴らしかった。
これを見ていてつくづく思ったのは、この大盤解説会の中継の可能性でした。配信するのは映像でなくてよく、盤面を次々と動かすための符号情報と解説音声だけで、毎日ホールで体感・経験した素晴らしい大盤解説会を、家にいながらにして観ることができるからです。
いろいろな意味で「百聞は一見にしかず」だなあと痛感した解説会でした。九州への出張から夕方の便で羽田に戻ってきた直後だったので、ホテルに戻ってそのままゆっくりするか解説会に行くか、大いに悩んだのですが、本当に足を運んで良かったと思いました。