毎日新聞夕刊「ダブルクリック」欄・第一回「アスレチックス」

10月から、毎日新聞火曜日夕刊の「ダブルクリック」という小さなコラム欄を毎週担当することになりました。
このブログへの転載を許可してもらったので、掲載と同時にこちらにもアップします。第一回は今日から始まるメジャーリーグポストシーズンの話題です。

■アスレチックス
アメリカの十月は野球の季節。三日から始まる地区シリーズ(五回戦制)、リーグ優勝決定シリーズ(七回戦制)からワールドシリーズ(七回戦制)まで、野球ファンは仕事が手につかない興奮の一ヶ月を過ごすことになる。僕もそんな一人。二〇〇四年アリーグ優勝決定シリーズのニューヨーク・ヤンキースボストン・レッドソックスのような歴史に残る死闘に今年は出合えるかな。わくわくした気持ちが抑えきれない。
僕が住むシリコンバレーの地元チームは、人気球団サンフランシスコ・ジャイアンツと貧乏球団オークランド・アスレチックスジャイアンツは不甲斐ないシーズンを送ったが、アスレチックスはきっちりプレイオフに進んだ。
日本人選手のいないアスレチックスだが、是非今年は日本の皆さんも注目してほしい。「野球に勝つ」とはどういうことなのかを新理論と統計研究で解明し、選手の獲得方針から試合の采配にいたるすべてに独自の野球観を貫き、貧乏球団でありながら高い勝率を維持しているチームなのだ。アスレチックスでは他球団が見捨てた二流選手たちが大活躍する。「安打と四球の価値が同等に評価される出塁率を打率より重視する」など、新しい評価軸で思わぬ人材が再発掘されるからだ。
アメリカのベストセラー作家マイケル・ルイスは、その秘密を名著「マネーボール」(ランダムハウス講談社)で余すところなく書いた。うまくいけば今年のアリーグ優勝決定シリーズで、貧乏アスレチックスが金満ヤンキースとぶつかる。選手年俸総額に三倍以上差がある二チームの激突を「マネーボール」片手に観戦するのが楽しみだ。
(毎日新聞2006年10月3日夕刊)

ちなみに地区シリーズ(NLDSとALDS)は、今日(3日)の午前10時(西海岸時間)から始まる。今日は10時、1時、5時と三試合。
アスレチックスがアリーグ優勝決定シリーズ(ALCS)に進んでヤンキースと当たるかどうかは、ツインズのエース、ヨハン・サンタナが先発する今朝の第一戦をものにできるかどうかにかかってくる。
メジャーリーグ好きの人は、次のPreviewを読んで、試合開始を待つといい。
「ALDS Preview: Twins vs. A’s」
http://www.hardballtimes.com/main/article/alds-preview-twins-vs-as/
「NLDS Preview: Cardinals vs. Padres」
http://www.hardballtimes.com/main/article/nlds-preview-cardinals-vs-padres1/
「ALDS Preview: Tigers vs. Yankees」
http://www.hardballtimes.com/main/article/tigers-yankees-alds-preview/