Linus Is Happy

1991年9月17日に、Linus Torvaldsが最初に「version 0.01 of Linux」(http://www.linux-aktivaattori.fi/projects/15_year_linux_birthday/)をアップロードしたので、まもなくLinuxは15歳の誕生日を迎える。ということで「Red Herring」誌8月21日号がオープンソース特集を組み、その中にLinus Torvaldsのインタビュー記事がある。わずか1ページなのだが、Linusの大切な言葉遣いを上手に切り取ったインタビューになっている。
残念ながらまだ原文はネットで読めないようである(いずれ読めるようになるのではないかと思う)が、彼の言葉遣いの重要なポイントを簡単に抽出しておこう。

  • オープンソース・ムーブメントが直面する今後のチャレンジは何か」という問いに答えて、Linusは「Open Source has already overcome the biggest challenge --- of acceptance and perception.」つまり、最大のチャレンジ(受容・承認と認識・理解)っていうのは、もう乗り越えたんだ、と彼は言う。
  • そしてその「受容・承認と認識・理解」とは何のことを意味しているのか。「From a purely technical standpoint, the open-source methodology is simply superior.」(純粋に技術的にみて、オープンソース方式のほうがとにかく優れている)という考え方が、長い時間かけてやっと「受容・承認」され「認識・理解」された、とLinusは総括する。このインタビュー記事のタイトルは「Linus Is Happy」だが、Linusはそのことをもって「Happy」と感じているわけだ。
  • そして「Modern software is simply too complicated to be done in hiding」。つまり現代のソフトウェアはとにかく複雑なので、隠しながら(オープンソースでなく)成し遂げることはできないのだ、と補足している。
  • Linuxの次の五年」について問われて、Linusは「それを僕に聞くのは間違いだよ、僕は意識的に技術にだけ集中している。それはそこに僕の関心があるからと、他のことは技術についてくると考えているから」と答え、こう続ける。「Linux development has always been a kind of open market, where the development direction gets set by customer demand, together with obviously a lot of what I simply call good taste --- the avoidance of things that are obviously going to be problematic in the long run.」つまり、オープンなマーケットメカニズムの中で淘汰が起こり「Good Taste」(「センスの良さ」)によって開発の方向が決められるので、「センスの悪さ」ゆえに発生する問題(Good Tasteを持たないビジネス判断や組織階層的な判断のことを彼は言外に指していると思う)が将来起こってくるのを回避できる、という彼の信念の表明である。
  • そしてLinuxは自分自身のことを「I've always been a pragmatic person,」と評し、「and I think one of the successes of Linux has been that pragmatic social side:」彼のプラグマティズムが、Linuxの成功要因の大きな部分を占めていると考えている。彼のプラグマティズムによって、ビジネスと技術の接点ができたと。別の文脈でオープンソースによっていいバランスが生まれた「there is a good balance between technology and money.」とも語る。そして「People no longer automatically think you can't make money as an open-source programmer.」つまり、「オープンソースプログラマーとは絶対に稼ぐことのできない存在」という認識が変化してきたことを重視する。