近藤淳也・令子夫妻、シリコンバレーへ

昨日(2006年8月21日)、近藤夫妻としなもんシリコンバレーに到着。二人は、先月いったんシリコンバレーに来て家探しなどの生活準備をすませ、ツール・ド・信州の運営等のために一時帰国し、このたび、しなもんも連れての引越しということになった。
さっき僕のオフィスに二人で来て(Hatena Inc.は、僕のオフィスの住所で登記しているので、もう彼らのオフィスでもある)、こちらに来て初めてつながったネット環境で何かしているなと思ったら、二人は何よりも先に、公開するための日記を書いていたのだった。
http://d.hatena.ne.jp/jkondo/20060822/1156264325
http://d.hatena.ne.jp/reikon/20060822/1156265544
日記を書き終えた二人は、これからトラックを借りて(U Haul)、家具(IKEA)と工具(Home Depot)の買い付けにいくと言う。
近藤を見ていると、アウトドア派で、ドゥー・イット・ユアセルフ厭わず(むしろ楽しみ)、朝型で、住へのこだわりはあっても衣食にこだわりがなく、実にシリコンバレー向きだなと思う。長旅と時差にもかかわらず、二人とも元気いっぱいだ。
僕と妻が初めてアメリカで暮らしたのが1991年11月からで、そのときは1年ほどサンフランシスコのダウンタウンに住んだ。当時31歳。今の近藤とほとんど同い年だ。あの頃は確かに今とは異質のエネルギーに満ちていたなぁと思い出す。
ところで、8月21日の日経新聞「経営の視点」欄に「台頭する新世代ネット企業――正攻法、本業の進化追求」という記事が掲載され、ミクシィはてなが取り上げられた。

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)最大手のミクシィと検索サービスのはてな。共に三十歳の社長に率いられ、新世代ネット企業の代表格と目される二社が最近、対照的な道を選んだ。

ミクシィは9月に株式を上場する。しかし、はてなは全く違う道を選んだ。僕が取締役になった17ヶ月前には全く想像もしていなかった方向だ。

 一方、この七月に創業五周年を迎えたはてな近藤淳也社長は「上場よりもグローバル企業への脱皮を優先したい」と、今月自ら米シリコンバレーに引っ越して英語圏向け事業を始めることにした。(略)
近藤社長は「すでに米子会社立ち上げを賄うのに十分な黒字が出ている」としており、米国では「単なるはてなの英語版でない、世界に通用するサービスを作る」と意気込む。

近藤の頭の中にある時間軸は、ベンチャーキャピタル(VC)の持つ時間軸と全く違う。しかも、近藤は「カネに全く興味がない」わけではないのだが「カネよりも大切なものがある」という信念の前に徹底的に頑固だ。つまり、当面このはてなという会社は、VCからの資金調達はできないということである(絶対にVCと意見が衝突するから)。ならば、今の事業から生まれる黒字をきっちりと維持・拡大しながら、コツコツとその収益を再投資するというやり方の中で、時間はかかってもブレークスルーを生む、という道を志向しなければならない(ブレークスルーが生まれたあとで、もしその実現に本格的にカネがかかるということがわかったなら、そのときに改めて資金調達をどうすればいいかを考えればいい)。
そのために近藤は、自らの環境を変え、それによって自分の頭の中から何かブレークスルーを生むぞと決心して、経営者的な「時間の使い方」が多かった東京時代とは全く違うライフスタイルで、一人のエンジニアに戻ってモノづくりに励む予定。
このシリコンバレーという独特の環境で新しい「時間の使い方」をする近藤から、果たしてどんな創造的なものが生み出されるのか、正直なところいつになるのかはよくわからないのだが、それが楽しみである。