今日の短編(12) アイザック・B・シンガー「カフカの友」

去年の夏休み、ふと思い立って、短編小説を毎日読んでみようと思った。
長篇小説や短編集ではさすがに毎日一つずつは読めないけれど、短編小説を一つずつなら・・・。それがとてもいいアイデアのように思えた。「短編小説」というカテゴリーをこのブログに作って淡々と記録し始めたのだが、(11)で終ってしまった(2005年9月1日)。本を書き始めたからだった。
ウェブ進化論」刊行(2006年2月8日)からの怒涛のような半年が過ぎ去り、懸案だった前著の文庫化「シリコンバレー精神」もようやく世に出し、なんだか一区切りで、去年の夏の「短編小説を毎日読む」というアイデアにやっと立ち戻ることができた。
というわけで・・・・・
アイザック・B・シンガー「カフカの友」

カフカの友と20の物語

カフカの友と20の物語

所収。

若き友よ、わたしは不能も同然だ。それは必ず趣味が洗練されてしまった状態からはじまる---空腹の時、人はマジパンやキャビアでなければならないということはない。わたしは、どの女も魅力的でない、と思うまでになっている。わたしはどんな欠点も目についてしまう。それが不能だということなんだ。(中略) ついでながら、これが書き物の問題になった場合のカフカの困ったことだった。彼には欠点という欠点がみな見えた---彼自身の欠点もほかのどの人の欠点も。文学はたいていゾラやダンヌッツィオのような、庶民や不器用者によって作られる。カフカが文学の分野で気づいたのと同じ欠点に、わたしは演劇の分野で気づいた。そしてこのことによってわたしたちは知り合いになった。