「ウェブ進化論」: あとがきの一部、発売日の東京でのイベント

umedamochio2006-01-30

2月7日に「ウェブ進化論」が発売になります。
将棋の羽生善治四冠が原稿段階で本書を読み「帯」に言葉を寄せてくださいました。
僕がどういう気持ちでこの本を書いたか。
あとがきからその一部を引用しておきたいと思います。

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そんな集中を続ける間、常に意識していたことが二つある。
一つはオプティミズム(楽天主義)ということである。
私はシリコンバレーで、人生の先輩たちが示すおっちょこちょいで楽天的なビジョンと明るい励ましに、助けられ、救われ、育てられてきた。日本の若い世代に対して、この本が同じような役割を果たせるとすれば、シリコンバレーに小さな恩返しができるかもしれないと考えた。
シリコンバレーにあって日本にないもの。それは、若い世代の創造性や果敢な行動を刺激する「オプティミズムに支えられたビジョン」である。
全く新しい事象を前にして、いくつになっても前向きにそれを面白がり、積極的に未来志向で考え、何か挑戦したいと思う若い世代を明るく励ます。それがシリコンバレーの「大人の流儀」たるオプティミズムである。
もちろんウェブ進化についての語り口はいろいろあるだろう。でも私は、そこにオプティミズムを貫いてみたかった。これから直面する難題を創造的に解決する力は、オプティミズムを前提とした試行錯誤以外からは生まれ得ないと信ずるからである。
もう一つは共通言語ということである。
序章の最後で述べたような「お互いに理解しあうことのない二つの別世界」が生まれてしまうことを懸念し、できれば二つの世界を架橋する共通言語を提示したいと考えた。
「ネットの世界に住む」ように生きている若い世代は、ネットのネガティブな側面ばかりを語る日本の大人たちに絶望感を抱いている。しかし、語らずともわかり合える仲間うちに閉じこもっていては、達成できることも限られる。
「ネットの意義を漠然とは理解しているが自分ではあまり使っていない。しかし知識欲は旺盛で、きちんと説明すれば新しい事象を理解し、その意味を考えることができる程度には十分に知的である。」
よくも悪くも、年功序列社会が容易に崩れない日本では、こういうタイプの大人たちが、依然としてあらゆる場所で力を握っている。でもその中には、頭が若くて柔軟性を持ち、若い世代の考え方を真摯に理解して、支援者・メンター・協力者としての役割を果たしたいと考える人もたくさんいる。世代間の不毛な対立ではなく、世代間の融合や相乗効果によって新しい価値を追求しようと企図する人もたくさんいる。
若い世代が何か新しいことをやるためには、こういう人たちの共感を得て、プロジェクトを興したり、組織を動かしたり、資金調達したりしなければならない。技術に関わるかビジネスに関わるかによらず、最先端の事象を、自分なりの論理でわかりやすく説明できるスキルはとても重要なのである。「こういうロジックで語れば、ネット世界を理解しない人たちにも説明できる」という実例としてこの本をうまく利用し、閉塞状況から抜け出す若い人が一人でもいれば、それは何よりも嬉しいことだ。
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さて、
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060112/p1
でお知らせした筑摩書房主催「梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」」イベントですが、招待ブロガーに加え、厳正な抽選で本欄読者から六名の方を抽出、既にその方々とは直接連絡を取り合っています。
http://www.b-shoku.jp/weblog/myblog/449
http://d.hatena.ne.jp/ktdisk
http://blog.goo.ne.jp/pajax/
http://d.hatena.ne.jp/ogijun/
http://naoya.weblogs.jp/nb/
http://blogs.dion.ne.jp/ambit/
応募して下さったのに連絡が行かなかった方は、申し訳ありませんが、2月8日に音声ファイルをアップする予定ですので、是非そちらをお聞きいただき、ネット上での議論にご参加ください。
2月7日のアジェンダは以下の通りです。

総合司会 橋本大也さん(情報考学 Passion For The Future)
第一部 これからのメディアについて
パネリスト R30さん(R30::マーケティング社会時評)、徳力基彦さん(FPN代表)、梅田望夫

Key Questions:

  • 日本においてメディア(テレビ、新聞、出版)の淘汰はどのように行われるのか?
  • 既存メディアとネットメディアは融合していくのか、並立し続けるのか?
  • 融合・淘汰が起こるとすれば、それはどういう時間軸で、どんなブレークスルーによって起こるのか?

第二部 これからのSNSとブログについて
パネリスト 山岸広太郎さん(グリー副社長)、川崎裕一さん(はてな副社長)、梅田望夫

Key Questions:

  • ブログとSNSはどのような成長を遂げるのか?
  • CGM(Consumer Generated Media)の収益モデルは何か?
  • Web 2.0スタートアップには「列強(ネット、メディア)による買収」というexitしかないのか?

「一時間のラジオ番組」のように収録して音声を公開しようという試みなので、二次会の懇親会の場を含めても、時間の制約ゆえ、参加者のブロガーの皆さんと広範囲なテーマについて議論を尽くせるとはとても思えません。
よって、

  • 2/7イベントはあくまでも刺激のインプットの場であって、そこで議論は完結しない。
  • 完結しない分は、ブログ上で活発に意見交換・議論をしていく。
  • そこに僕(梅田)も加わる。
  • よって上に掲げたKey Questionsも、パネリスト向けの「質問」というよりも、広く一般向けの質問であり、イベントの時間内は、時間の制約で一部の人の意見だけが開示されるけれど、それを刺激にして、ブログ上で自由に議論を展開しよう。

ということにしたいと思います。
では明日、日本に向けて発ちますので、しばらく本欄の更新はお休みになります。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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