シリコンバレーの「空気」

「遅咲きブログ少年@はてな」(id:junkonno)の「アメリカで退職」
http://d.hatena.ne.jp/junkonno/20050813/1124177972
は、シリコンバレーの「空気」をうまく表現している。

約5年間勤めたNVIDIA社を退職しました。人生2度目の退職です。(略)
いや〜びっくりしました。「2週間前に通知したらそれでいい」とは聞いてましたがまさにそのとおり!月曜の朝、深刻な顔をして上司に話をしたら

Congraturation !!

ですって。。。「Junがいなくなるのはつらいし、さみしいけど、君の門出を祝福するよ」と硬い握手。さすがはシリコンバレーさすがはアメリカ。人類皆兄弟・どこにいってもまた繋がる・下手をしたらお客になっちゃうかも…という共通認識のなせる技。(一応彼の名誉の為に言っておくが、決して軽い男ではなく本当に良い人なんですよ、でも日本企業だとその言葉は最初にこないよね(^_-)-☆)
告知後即効でVPが飛んでくる。「もう一度考え直せないか?どこか他の部署とか色々チャンスはあるぞ?」と一応の引止め工作をしてくれるが、固い意志を伝えると

Congraturation !!

同僚に伝えると一様に

Congraturation !!

みんなイイヒトだなぁ…(シミジミ)
(略)
最後にExit Interviewなる人事部の人とのミーティングがあるんだけど、「もし何かあったらいつでも戻ってきて欲しいとメッセージを預かってます」とわざわざ言われたので別に私が用無しだったから”あっさり”だったわけではなさそう。

シリコンバレーは確かに流動性が高い社会なので、「どこにいってもまた繋がる・下手をしたらお客になっちゃうかも…という共通認識」というのはある。でも、「退職」して「新しい挑戦」をするんだから素直に「祝福する」という流れは、打算ゆえの言葉ではない。シリコンバレーの「空気」ゆえなのである。
僕にも同じような経験がある。1997年に、勤めていた大きな会社を辞め、異国での未経験の会社設立に奔走していたときのことだ。不動産屋、家具屋、カーペット屋・・・・、ありとあらゆるシリコンバレーの市井の人々が(IT産業やベンチャーに関わる友人でなかったところが余計よかった)、「大会社を辞めて自分の会社を作るのは正しいことだ、おめでとう」と元気付けてくれた。なるほどこれが起業家精神や挑戦気質を醸成するシリコンバレー独特の「空気」なのかと思ったのを本当によく覚えている。同じアメリカでも東部や中西部から来ている友人にそんな経験について話すと、それがアメリカ全体の「空気」ではなくて、まさしくシリコンバレー独特の「空気」なのだということがよくわかった。
シリコンバレーだからといって、そこに住む誰もが起業家精神に溢れているかと言えば、必ずしもそんなことはない。公開している大企業で働く人もたくさんいる(彼が退職したNVIDIAも元はベンチャーだったけれど今は立派な大企業だ)。しかし皆、今はそういう選択をしていないとしても、「大企業を辞めて何か新しい挑戦をする」という生き方を、「自然な選択肢」の一つとして持ち、「チャンスが巡ってくるならば当然も自分も・・・」というふうに捉えている社会全体の「空気」というのは明らかに存在する。そうでなければ、反射神経的に「おめでとう」という言葉は出てこないのである。