アンディ・グローブ インタビュー

日経 1/5/05 世界システム再構築(3) インテル会長 A・グローブ氏

米国の一極優位はもう終わった。中国が米国と対峙(たいじ)する二極構造に移行したと思う。中国の経済力や技術力は米国に追いついたわけではないが時間の問題だ。(略)
歴史を振り返ろう。ナチス・ドイツは最悪の独裁・全体主義体制で技術大国だった。民主主義が技術や経済の発達を促すというのは歴史的根拠のない思い込みだ。中国が共産党支配を維持しつつ市場経済に徐々に移行している事実をみてもそんな思いを強くする。(略)
創造性は政治体制や経済の発展段階に左右されない。(略)
国境に守られてきた産業・職種も国際競争にさらされるようになる。たとえば医者も患者も移動せずに遠隔操作で診断や外科手術が可能になる。高度な専門職の仕事も家電製品と同じように輸出入できるようになる。コストが低い中国やインドなどの国はますます有利になる。

――IT(情報技術)とインターネットの発達が思想統制を難しくしている面もありそうです。
 「それも簡単に一般化できない。(印刷機の発明者とされる)グーテンベルク以来、本は民主主義をはぐくんだのか妨げたのか。ネットは思想の自由を広げる一方、憎しみも広げる。民主主義政府もテロリストもともにネットを使いこなす。ITの政治に対する影響は一方向ではない」