CNET Japan連載を終えての感想(3)

僕は老若男女を問わず「良質の日本企業人」が好きだ。CNET Japan連載を始めてまもなく、アクセスログを見せてもらって、厖大な数の日本企業からのアクセスがあるのを知った。いま日本のIT企業人は、グローバル競争におけるサバイバルを、共同体を維持・発展しつつ行わなければならないという矛盾の中でもがいている。その矛盾が露呈しないのは「良質の日本企業人」による過労働が支えているからだ。むろんそういうことも含めた全体を批判するのはたやすい。しかしわかりやすい代案なんてないのだ。ことに共同体の成員という立場での選択肢はそう多くない。自然と過労働に向かっていく。その姿は、そういう道を選んでいたかもしれない自分の「あり得た現在」のようにも思える。
まぁとにかく、彼ら彼女らは忙しい。無駄な会議、無駄な書類、無駄な・・・、無駄の数々。貴重な時間は飛ぶように過ぎていく。そういう無駄を批判することもたやすいが、文句ばっかり言って何もしないということのできない性分の人たちは、無駄の山を踏み越え踏み越え、プライベートの時間に食い込んでも仕事を続ける。そういう人たちが、一日何時間もかけてネット全体をぶらぶらして、世界で何が起きようとしているかを勉強したり考えたりすることなんてできない。あるときから、多忙な日本のIT企業人を想定読者イメージの一つにして、
「じゃあ、とりあえず、これだけ読んでくれてればいいよ。本当はリンク先も、引用する英語部分も読んだほうがいいけど、忙しけりゃそれもすっ飛ばして日本語部分だけ読んでくれてもいいよ。」
と心の中で問いかけつつ、連載を続けていった。
そして、連載を終えて一週間、そういう人たちから、たくさんの感想メールをもらい、正月早々とても幸せな気分になった。