今年のサンフランシスコ・ジャイアンツは面白いぞ。

久しぶりにメジャーリーグのことを書こう。
今年のサンフランシスコ・ジャイアンツは、前評判が最低で、どんな雑誌の予想もナリーグ西地区最下位。しかも(162試合で)100敗以上するのではないかが定説だった。主砲ボンズがいなくなり、シーズンオフに目立った補強もしなかったからだ。そして開幕から1勝6敗の成績で、こりゃあひどいな、という感じだったのだが、そこで「底を打った」のだった。
その後は12勝10敗で、4月全体の戦績は13勝16敗。まだ5割に到達していないから褒められたものではないのだが、数字以上に、明るい材料が出てきたから、今年は楽しい。新しいエース、新しいクローザー、新しいトップバッター、若い三人が現れ、それに続く若手も伸びてきていて、ボンズに依存した鈍重なベテラン中心のチームから、若くて新しいチームに生まれ変わる兆しが見えるからだ。
新しいエースは、Tim Lincecum(Draft: 2006 - 1st round (10th pick) by the San Francisco Giants. 1984年生まれ)。開幕から6試合に投げて4勝1敗。防御率は1.73。三振40と、抜群の安定感で、細い身体から97マイルから98マイルの速球を投げる。イニングの合間は、iPodを聴きながら踊っていて完全にリラックスしているんだ、とラジオで解説者が、新世代のエースの雰囲気に驚いていた。
新しいクローザーは、Brian Wilson(Draft: 2003 - 24th round by the San Francisco Giants. 1982年生まれ)。開幕からすでに9セーブ。Robb Nenが故障した2003年以来、5シーズンにわたってクローザー不在に悩まされたきただけに、これは大きい。2002年にNennの活躍もあってワールドシリーズまで行ったあとは、ずっと終盤での逆転負けに泣かされ続けてきたのだ。
そして新しいトップバッターは、Fred Lewis(Draft: 2002 - 2nd round by the San Francisco Giants. 1980年生まれ)。開幕からレフトでレギュラーに定着し、打率.337、出塁率も4割を超え、盗塁4とスピードもあり守備もいい。Fred Lewisだけでなく、同じく新人内野手のEugenio Velez(盗塁6)も含めて、4月のチーム盗塁数が33というのは、「走らないジャイアンツ」時代から考えると信じられない変化だ。
これだけの好材料がチームに新しく加われば、普通は5割を超える数字を残せるはずなのだが、誤算は、Barry Zitoの大不振。4月は6試合に登板して6連敗。防御率7.53。ついにブルペンでしばらく調整することになった。Zitoは、2006年オフに、「7年間$126mil」という巨額の契約を結んだにもかかわらず、昨年は11勝13敗で今年は0勝6敗で、ファンからの風圧たるや大変な状況にある。何せ7年間フルに登板して大活躍したとして、それでも、一試合あたりのフィーが約50万ドルなのだ。
ラジオでもZitoの話になると、誰もが興奮して論点がぐずぐずになり、「forget about the money」(とにかく金のことは忘れて冷静にこれからのことについて話そう)という言葉を一日に何度聞くだろう、という毎日だ。
「forget about the money」そして「forget about 0-6 in April」で、Barry Zitoが何とか復活して、残り5ヶ月で15勝くらいすれば、久しぶりにジャイアンツも、プレイオフ・レースの一角に食い込めるかもしれない。