毎日新聞夕刊「ダブルクリック」欄・第十一回「長期休暇」

毎日新聞火曜日夕刊コラム欄の第十一回です。テーマは「サバティカル」。じつは今発売中の「フォーサイト最新号」に、「知的生産のプロとしての「サバティカルの決意」」という文章を書き、かなり詳しく僕の決心について書いています。この短いコラムは、その文章と対になったものですが、「フォーサイト」の文章は一ヵ月後にネットに転載されたときにご紹介します。

年の瀬に決めたことがひとつある。五年以内に一年間の「サバティカル」 (研究のための長期休暇) を絶対にとるぞ。そう決心したのである。
僕は基本的に自営なので、サバティカルは決意の問題である。ここしばらく激しく働いてきたから、一年くらい仕事をしなくても生活する余裕はあるので、その期間の仕事をすべて断ればいいだけなのである。でもかえってそれが難しい。欧米の大学や研究所のサバティカル制度と違い、戻ってきてすぐ元の仕事に戻れる保証がないからだ。
いま僕は、経営コンサルタントとして、いくつかの日本企業と年間契約を結ぶことで事業を営んでいる。サバティカルをとる上での最大の難問は、一度すべての顧客との契約をご破算にしなければならないこと。日本の企業社会は継続性をとても重視する。きちんと仕事をし続けていれば、年度末に契約は自然に更新されていくのだが、いったん中断すれば「ゼロからのスタート」になる。それが怖い。でもそのリスクは取ろうと腹を決めたのである。
しかしつい先日、脳科学者の茂木健一郎さんと対談していて、ふと僕がそんな話をしたら、彼は即座に「二年契約にしてもらえばいいじゃない」と言った。
一瞬でその真意を理解し、目からうろこが落ちた。「サバティカルを一年取るので、同じ契約金額でいいですから一年契約を二年契約に変えていただけませんか」って、顧客に頼めばいいわけか。ならば、サバティカルから戻ったときに「同じ金額で一年契約」に戻してもらえればベスト、それが無理でも「同じ金額での二年契約」 (サバティカル前の半額) を継続し、その分、仕事の負荷を減らせばいい。茂木さんの貴重なアドバイスで、僕のサバティカルの決心は、さらに揺るぎないものになったのだった。
(毎日新聞2006年12月19日夕刊)