オプティミズムについて

ウェブ進化論」のあとがきで、僕はオプティミズムについてこう書いた。

もちろんウェブ進化についての語り口はいろいろあるだろう。でも私は、そこにオプティミズムを貫いてみたかった。これから直面する難題を創造的に解決する力は、オプティミズムを前提とした試行錯誤以外からは生まれ得ないと信ずるからである。

本が出て以来、たくさんの取材を受け、たくさんの感想を読んだ。
僕がこの本を書く上でオプティミズムを貫いたのは、「放置していてもウェブ社会の未来は素晴らしいものになりますよ」という安直な楽観があるからではない。
「未来というのは、我々一人ひとりの生き方や行動によって変わり得るものだ」と思い、「難問解決に向けて、一人ひとりがどういう思想を持って行動するのが、トータルにみたときに、それらが最も大きな力に結集し、未来を変え得るのか」を突き詰めていくと、やはり根底にオプティミズムがあったほうがよい、と考えるにいたったからだ。そのほうが力が出るからだ。
「十年後はどんな社会になっていると思いますか」
と問われることが多いが、そんなことはわかるわけがない。未来は我々が作るものだからである。ウェブ進化に参加するというのはそういうことである。
そういう問いではなくむしろ、
「十年後にこういうふうにならないために、こうありたいと思う世界に少しずつでも近づけていくためには、何が必要なのか。その必要な何かが実現されるためには何をしなければならないのか」
ということが問われるべきなのだ。
本気でそう問いかけてみてはじめて、オプティミズムの意義が理解できるはずだ。