Googleはどんな会社を買収するのか

IPOから1年が経ち、Googleはさらに市場から4,000億円以上の資金を調達する。
何にそんな金を使うの?
当然、買収でしょ。
と、まぁ、そんな話がいろいろなところで出ているが、深く考えていない記事や論考が多い。
Googleのこれからについて予測することほど難しいことはないのだが、Googleという会社は、Yahooをはじめとする普通の「ベンチャー出身の大企業」とは全く異質な会社なので、買収する会社のタイプが違う。僕の観察を以下に簡単に書いてみる。
Google内部の変質も急激だ」という説もあるから、大はずれになる可能性もあるが、参考になればと思う。

  • 「これは絶対ゼロからは開発できないな」と唯我独尊のGoogle開発陣が思うほど凄い技術の蓄積のある会社(例、Keyhole --- Google EarthGoogle Mapの基盤技術)を買収するのはアリ。
  • ハッカーばかりが集まっている会社を少額で買収するのはアリ。採用の延長線上プラスアルファという発想であろう。
  • ネット・サービス系の会社で、「ごく普通の技術をベースにしたサービスではあるが参入タイミングが早く、市場シェアを獲得したようなタイプの会社」は買収しない。日本でいえばmixiみたいな事業を買収するという発想はGoogleにはない。本当に参入したければ、どんなに後からでの参入でも、Google流で追いつけると信じているからだ(GmailやGtalkを見よ)。
  • グローバル展開の一環として、XXX国のベンチャーで最も技術的に優れた会社(ハッカーが集まっている会社)を買収し、研究開発拠点のベースとするというのはアリ。確かブラジルでそんな買収をしたような記憶がある。
  • 最近は、Google内部の技術マネジメントとビジネスマネジメントが、別々のロジックで動いているような気がする(あくまでも直感だ)。よって技術サイドがあまり関心を持たないような(逆にいえば、技術サイドを邪魔しないような)、ビジネス拡張戦略のための、たとえば広告代理店的なリアル企業の大型買収が、ひょっとするとあるのかもしれないという気がする。ここは大外れの可能性がある。

たとえば「Skypeはどうだろう」なんていう思考実験をしてみると面白いわけだが、たぶんGoogleSkypeを買うという発想ははなから持たない会社だという気がする。
またYahooはFlickrを買ったし、Ask JeevesはBloglinesを買った。けれどGoogleは、そういう会社を買うことはたぶん一度も考えたことがないだろう。そんなもの、必要なら自分たちですぐに作れると思っているし(たぶん作っているだろうし)、そうすべきだと考えているに違いないからだ。だからGoogleTechnoratidel.icio.usを欲しいとは思わない。電通なら欲しいと思うかもしれない。そういうことだ。
なーんてね。一応言い切ってみました。
明日、この予想に反する発表があったりすると大恥をかくが、もしそうだったらそのときまた「なぜか」を考え始めることにしよう。
ネット・サービス系の小さいベンチャーの買収が絶対ないとは言えないが、その場合は技術者獲得という意味が大きいはずで、ネット上での市場シェアを買う(早期参入による成功のご褒美)という発想はないと思う。よって仮に買収話が展開しても、Google側の買収想定金額は、売却側の市場シェアを勘案した高値よりも、たぶんずっと低いものとなる。それで折り合えば、Google側としては上記第二ルールの買収として、Goがかけられる。でも折り合うケースは少ないだろう。Yahooをはじめとする競合には、市場シェアを買うという発想があるゆえプレミアムがつくからである。ただ株式交換の買収の場合「Google株が今後さらにどれだけ急上昇していくかの期待」という要素があり、売却側ベンチャーの創業者がそこをもの凄く強く信じている場合には、折り合うこともあるかもしれない。ただ売却側が既にベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をしていてボードをVCが牛耳っている場合には、なかなかそんな不確実な期待というファクターではYESと言わない。そんな諸々を総合的に判断すると、やはりネット・サービス系の小さいベンチャーの買収は、第二ルールの買収の範囲内ではないかという結論に達するのだ。