谷川健一

谷川健一の本はこれ以外はきちんと読んだことがない。

独学のすすめ―時代を超えた巨人たち

独学のすすめ―時代を超えた巨人たち

今、日経夕刊で谷川健一のインタビュー連載が続いている。6月16日付けの第四回から。

 四十九歳にして旅行と著作の人生が始まった。
 一年半余、川崎市の病院に入院していたのですが、小高い丘の上にあって、周囲は森。深夜ヒグラシが鳴いて眠れないので、石を投げたりしていた。その時、「退院したら、息の続く限り走って民俗学をやろう」と心に誓いました。頼るものがある時は勇気がわかないが、無一物は強い。
 一カ月十日平均、一年に約四カ月調査で全国各地を回りました。旅行前後の準備や疲労を考えると執筆時間は半月くらいしかない。千五百メートル自由形のようなもので、泳いで戻って、ターンしてまた次の調査に出かける。そんな生活が十数年続きました。全国を歩き回ったことが健康にもよかったのか、以後、病気にはなりませんでした。
 よくおカネが続いたねって? 当時は雑誌隆盛の時代で、発表の場は結構与えられました。雑誌論文をまとめて単行本にして、さらに文庫にもなると、収入になったのです。それと、三一書房から出た「日本庶民生活史料集成」(三十巻)を企画編集し、その印税も入りました。

こういう話を読むと勇気が湧いてくる。