谷川健一
谷川健一の本はこれ以外はきちんと読んだことがない。
- 作者: 谷川健一
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 1996/10
- メディア: 単行本
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四十九歳にして旅行と著作の人生が始まった。
一年半余、川崎市の病院に入院していたのですが、小高い丘の上にあって、周囲は森。深夜ヒグラシが鳴いて眠れないので、石を投げたりしていた。その時、「退院したら、息の続く限り走って民俗学をやろう」と心に誓いました。頼るものがある時は勇気がわかないが、無一物は強い。
一カ月十日平均、一年に約四カ月調査で全国各地を回りました。旅行前後の準備や疲労を考えると執筆時間は半月くらいしかない。千五百メートル自由形のようなもので、泳いで戻って、ターンしてまた次の調査に出かける。そんな生活が十数年続きました。全国を歩き回ったことが健康にもよかったのか、以後、病気にはなりませんでした。
よくおカネが続いたねって? 当時は雑誌隆盛の時代で、発表の場は結構与えられました。雑誌論文をまとめて単行本にして、さらに文庫にもなると、収入になったのです。それと、三一書房から出た「日本庶民生活史料集成」(三十巻)を企画編集し、その印税も入りました。
こういう話を読むと勇気が湧いてくる。