山本七平の日本人論
最近出版された「山本七平の日本の歴史」(上・下)
の上巻の冒頭に谷沢永一が「埋もれていた名著、ついに刊行」という少し長い解説を書いている。その中で山本ベンダサン三部作と山本日本人論五部作が紹介されていた。
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- 作者: イザヤベンダサン,山本七平,Isaiah Ben-Dasan
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- 作者: 山本七平
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日本人とは何か。―神話の世界から近代まで、その行動原理を探る〈上〉
- 作者: 山本七平
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日本人とは何か。―神話の世界から近代まで、その行動原理を探る〈下〉
- 作者: 山本七平
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高校時代の倫理社会の教師が一年間、「山本七平を読む」という趣味に偏した授業をやってくれたおかげで、以来山本の著作はずいぶん読んできたが、趣味の読書の域を出ることなく、何が書かれていたのかをしっかりと把握して記憶することもなく、それについて何かを深く考えることなどせずに今日に至った。ただいずれは山本の全作をきっちり読みたいと、機会があるたびに本は買い揃えてきた。
さてこの山本ベンダサン三部作と山本日本人論五部作。持っていないものは皆、絶版の本ばかりなので、「スーパー源氏」と「日本の古本屋」で注文して、東京の友人宅に届けてもらうようにした。今回の出張中にそれらを受け取り、パラパラと眺め、その中の「勤勉の哲学」という本に目を奪われた。
この本は1979年に書かれ、文庫になったのは1984年。入手したのは文庫版だが、この文庫版に小室直樹の超長文解説が書かれているのである。解説だけで85ページ。この解説が書かれたのは21年前である。この解説が素晴らしかった。
日本資本主義とは何か。その本性は。この解明こそ、現代日本理解のために、最初に、そして最後になされるべき作業である。
このテーマに正面からとりくんだ山本七平氏の力作「勤勉の哲学」は、日本社会科学が産んだ最高業績の一つである。今後日本の社会学、経済学とくに経済史学および経済人類学、そしてあるいは政治学、法学も、本書を無視して前進することはできないであろう。
このように本書は、学説史的といってよいほどの研究でありながら、本書ほど、理解されず、無視されてきた作品も珍しい。
この文章に、小室直樹が異常に長い解説を付すことになった理由が凝縮されている。
繰り返しになるが、「勤勉の哲学」は1979年に書かれ、小室直樹の解説は1984年に書かれている。
それからの21年間、80年代末バブル景気とその崩壊があり、90年代の「失われた10年」があり、90年代末ITバブルとその崩壊があり、21世紀に入って現在に至った。当時の日本と比べ、何が不変で何が大きく変わってしまったのだろう。
縁があって(株)はてなの取締役になって、1975年生まれの創業者・近藤淳也や、彼よりも若い連中と、はてなという会社をこれからどうしていくべきなのかについて、かなり哲学的な議論を続けている今、近藤らの世代がこの世に生を受けた当時の日本でいったい何が懸命に議論されていたのかをこの山本の著作と小室直樹の解説から強く感じ、何かを深く考えるきっかけが得られたような気がした。
カテゴリーを改めて、山本の「勤勉の哲学」を、付記された小室の解説を補助線に読んでいこうと思う。日本の若い世代がこれから作っていく「新しい日本」は、「勤勉の哲学」に支えられた日本資本主義(「古い日本」)の何を引き継いでいけるのであろうか、ということを考えるきっかけとしたい。こういう学問分野についてはど素人の僕でも、自分のBlogで感想を書く分には、碩学の先生方からお叱りを受けることもなかろう。そういうところもBlogの効用の一つである。