次の10年はどういう時代か(2)

はてなブックマークは、自分が書いたもののうち、どれがどのくらい評価されたかを示す指標としても面白いが、たとえば
http://r.hatena.ne.jp/feed/http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/rss
で一覧できるように、これまでのベスト3は、今現在ブックマーク71usersで、「Blog論2005年バージョン(2)」と「次の10年はどういう時代か? 」と「「知的生産のための道具」としての「はてなブックマーク」」が並んでいる。それらを改めて読んでみたが、「次の10年はどういう時代か?」は、大仰なタイトルの割に中身が薄いなと思ったので、同じタイトルに番号を振りつつ、思いついたときに書き足していくことにしたいと思う。
昨日はロジャー・マクナミーの講演をご紹介したが、その中でロジャーは、

How did we get here? The technology bull market of the 90s didn’t happen by accident. It happened because of two forces: Moore’s Law and the Berlin Wall.

90年代のテクノロジー・ブル・マーケットを引き起こした要因は、ムーアの法則ベルリンの壁の崩壊だと言っている。後から言うのは簡単ではあるが、教訓は、80年代末時点で「次の10年=90年代」を変えていく要素は既に存在していたということだ。大きな意味を持つ力、泡沫的に消えていく力、いろいろ取り混ぜてではあるけれど、「次の10年」を変える力の芽というのは既に存在しており、その中のどれを重要視して「次の10年」を考えるかで、答が全く違ってくるということなのだ。

「おっちょこちょい」であり続けたい

僕がシリコンバレーや米国IT産業に知的に惹かれるのは、「次の10年」を変える力の芽を体現する会社が無から生まれてとてつもなく大きな存在になることである。インテルマイクロソフト、アップル、シスコ、アマゾン、ヤフー、グーグル。皆、最初は無から始まる。でも「次の10年」を変える大きな力の芽を内包していたから、色々な幸運が重なってこれほど大きな存在となるまで成長した。
でもそんなことが始まったばかりのときというのは、普通の暮らしをしている人からは目に見えないほど些細なことであり、そういうことに大騒ぎしている奴等はよほどの「おっちょこちょい」か、「いかがわしい山師」に見えるものである。僕としては、考えたこと考えたこと結局皆間違っていて「あいつはいかがわしい山師だった」という結論に至るという未来はかなり辛いけれど、「おっちょこちょい」ではあり続けたいなと思っている。そのほうが面白いからだ。たとえば、はてなに参画することにしたのも、はてなや創業者・近藤の個性に、そういう「次の10年」を変える「力の芽」みたいなものを感じたからで、傍からみれば「おっちょこちょい」と見られて全く構わないわけである。ここは客観の世界ではなく主観の世界だからだ。

小さな芽の何に注目するかが勝負

前稿「次の10年はどういう時代か?」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050402/p1
で挙げた3つの要素は、

であったが、最初の2点は「これまでの10年」から継続した大きな大きな流れで、第3点の「オープンソース」ということだけが新しい流れだと思う。むろん「オープンソース」ということを狭義に定義して専門的に議論すれば、それは「インターネット登場より前から考え方自身が存在していた」とかいう議論はあり得るが、あまり興味がない。
オープンソース」について僕が面白いと思う本質は、不特定多数無限大の人々がインターネットでつながっている状態での「情報」の新しい意味、特に「情報がオープンである」ということがどういう意味を持つのか、ということである。

Culture of sharing

たとえば「グーグルは本当に面白いな」と思ったいくつかのきっかけの一つが、グーグルが社内を情報共有をテコにどうマネジメントしているかについてのメモを読んだときだった。
2003年5月12日(奇しくもちょうど2年前の今日)に、CNET Japan連載で「天才社員が支えるGoogleのマネジメント手法」
http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/000331.html
というBlogを書いた。「Craig Silverman」というタイトルのこのメモ
http://www.socialtext.net/etech/index.cgi?craig_silverstein&login=user2369
が面白くて、いろいろとネット上を探していくと、メモで読んでもはっきりわからなかったことが、「Google's Exponential Returns」というBlog
http://www.corante.com/many/20030401.shtml#32099
ではより詳しく書いてあるのが見つかった。そこでBlogにはこんなふうに書いた。

このBlogは、シリコンバレーで4月半ばに開かれたオライリーの「Emerging Technology Conference」でGoogle第1号社員Craig Silverstein (Director of Technology、30歳)が話をした内容をもとに書かれたものだ。彼のスピーチのメモだけ読んでもなかなかその本質が理解できなかったのだが、このBlogを補助線に読むと、Google社内の開発プロジェクト・マネジメントの思想を垣間見ることができる。
「At Etech, first employee Craig Silverstein discussed Google's product development process and the systems that support it. What's different is the use of smaller organizational units (groups of 3 on average) supported by lightweight inter-group communication with a culture of sharing.」
Googleでは平均3人の組織ユニットが、何事も共有するのだという企業文化のもとで、lightweight inter-group communicationを駆使して、仕事を進めているという。

僕はたとえばこの文中の「culture of sharing」なんてあたりに、「次の10年」を変える「力の芽」の可能性を感じたし、実は今も感じている(Googleの事例は、インターネット全体の開放的空間ではなく社内という閉鎖的空間の中での限定的な話ではあるのだが、それでも徹底的な情報共有が行われるとこれまでとは全く違うことが起こる)。そして、その「力の芽」は、世界中のほんのわずかの部分にしかまだ適用されていない。だからこそ逆に「莫大な可能性」があるのだというふうに考えてしまうのが、「おっちょこちょい」のサガなのである。(つづく)