革命家ジョージ・W・ブッシュ by 谷口智彦

日経ビジネス購読者向けサイトより

 ブッシュ氏について、何事か断定的に物を言うのはいかにも早い。しかしここは多少のリスクを覚悟のうえ、同氏についてもレーガン氏に関してと同様、米国内外のインテリ達がこぞって反省する日はじき来ると言っておきたい。
 なるほどブッシュ氏は、本人自身認める通り、言語操作能力に長けているとは言えない。まさにこの能力で勝ち上がってきたインテリたちに、ブッシュ氏は一言で言うと無能に見える。これはちょうど、学がないといってレーガン氏を小馬鹿にしたがったのに似た心理の働きだ。
 この先まず米国で、ブッシュ氏は見かけほどデクノボウではなかったと、見直しが始まるだろう。

 内政の急所は年金改革である。年金の問題は、2018年になってようやく本格的に噴出すると言われている。ブッシュ氏が任期を終えて後、2度の大統領選挙を経てようやくあらわになる問題に過ぎない。だから放置しようとする立場があり得るだろうに、選挙を気にしないでいい自分にこそ取り組ませてくれと、ブッシュ氏はそう言いたいようだ。他方外政は、パレスチナ和平と中東の民主化である。
 内政、外政で急所とされた両者に共通するのは、第一にいずれも「超」のつく難題であること、だから第二に、あえて取り上げなくても非難がましいことは言われないだろうこと、にもかかわらずこれを正面の課題に据えることによって第三に、利他的行為に政治生命を賭そうとしていることを鮮明にしたところである。

 人間とは変わらぬものであると考えるのが保守思想の精髄とすれば、いや変われる、変えることができると考えるのは進歩思想であって、その極端な形態が革命思想である。ブッシュ氏を革命家と呼ぶのは、そのような意味においてだ。