新著「シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代」4月25日刊行

いよいよ名人戦が開幕し、将棋界も新しい一年のスタートです。今年度も、シリコンバレーから将棋を観つづけていこうと思います。
4月25日刊の新著「シリコンバレーから将棋を観る羽生善治と現代」、アマゾン、紀伊国屋等で予約が始まりました。

「将棋を観る」楽しさや「生きていくうえで大切な何かを将棋から得ること」が、本書のテーマです。ベストを尽くして書きました。ぜひ手にとっていただきたいと思います。

将棋を「観て楽しむ」ための資格なんて、どこにもないのである。
誰でも、明日から「指さない将棋ファン」になれるのだ。
将棋から一度は遠く離れたけれど将棋の世界が気になっている人、将棋は弱くてもなぜか将棋が好きで仕方ない人、将棋を指したこともないのに棋士の魅力に惹かれて将棋になぜか注目してしまう人……。
そんな人たちに向け、素人でも感じ取れる将棋の魅力、そして棋士という素晴らしい人たちの魅力を描くことで、「将棋を観てみよう」と思う気持ちを一人でも多くの人が持つことになればいい……。それだけを願いながら、本書を書き始めることにする。   (「はじめに」より)

結局私は、二〇〇八年に羽生が挑戦した四つのタイトル戦のうち、棋聖戦王位戦竜王戦の三つの対局の現場に足を運び、二つのウェブ観戦記を書くことになる(第二章、第五章)。棋士たちとのさまざまな出会いや、いくつかの勝負の帰趨に誘(いざな)われて、膨大な時間を将棋の世界で費やすことになり、その結果、私の二〇〇八年は人生最高の年となった。いろいろと回り道をしたけれど、自分がいちばん好きなことが何なのかをしっかりと確認することができた。
次章から、羽生が三つのタイトルに挑戦するそれぞれの勝負の現場に身を置いて考えたこと、感じたこと、学んだことを、対局者たちとの交流の過程も通して描いていこうと思う。(第一章より)

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4120040283.html
目次は次の通りです。

はじめに――「指さない将棋ファン」宣言


第一章 羽生善治と「変わりゆく現代将棋」

変わりゆく現代将棋/予定調和を廃す緊張感/将棋の世界に革命を起こす/盤上の自由/イノベーションを封じる村社会的言説/将棋の未来の創造/オールラウンドプレイヤー思想/知のオープン化と勝つことの両立/高速道路とその先の大渋滞/将棋界は社会現象を先取りした実験場/ビジョナリー・羽生善治/二〇〇八年、ベストを尽くす


第二章 佐藤康光の孤高の脳――棋聖戦観戦記

桂の佐藤棋聖、銀の羽生挑戦者/羽生挑戦者「秘策」に誘導か/未踏領域に突入、「均衡の美」をタイトル保持者が解説/「孤高の脳」が生む無限の広がり/「真理」を探求する対局者、終局後の「至福の時間」


第三章 将棋を観る楽しみ

ネットの優位を活かす人体実験/「修業ですから!」/「将棋を指す」と「将棋を観る」/将棋を語る豊潤な言葉を/一局の将棋のとてつもなく深い世界/ネットと将棋普及の接点/出でよ! 平成の金子金五郎/金子の啓蒙精神/「現代将棋にも金子先生が必要です」


第四章 棋士の魅力――深浦康市の社会性

「喧嘩したら勝つと思うよ」/サンフランシスコの棋士たち/深浦康市の郷里・佐世保への思い/安易な結論付けを拒む「気」を発する対局者/現代将棋を牽引する同志/二つのテーブル/人生の大きな大きな勝負


第五章 パリで生まれた芸術――竜王戦観戦記

正しいことが正しく行われている街で/人間が人間と戦う将棋の面白さ/F1と装甲車/昼食休憩、佐藤康光棋王の局面解説/渡辺と羽生、24歳のパリ/みなぎる精気、匂い立つ成熟/羽生世代の信頼関係/繰り返す「青と壮」の戦い/自信に満ちた手つきの真意は?/記録係・中村太地四段の目/昼食休憩、米長邦雄会長の局面解説/佐藤康光棋王、現代将棋を語る/羽生名人、大局観の勝利


第六章 機会の窓を活かした渡辺明

終局後、パリのカフェで/「立て直せる時間があるかもしれない」/羽生王座への祝辞、十七年という長さ/「勝負の鬼」が選んだ急戦矢倉/若き竜王に大きく開いた「機会の窓」/初代永世竜王への祝辞、将棋グローバル化元年/少しでも進歩しようとすること


第七章 対談――羽生善治×梅田望夫

リアルタイム観戦記と「観る楽しみ」のゆくえ/揺れ動き続ける局面と、均衡の美/羅針盤のきかない現代将棋の世界/対局者同士が考えていること/雲を掴むように、答えのない問題を考え続ける/人は、人にこそ、魅せられる/けものみちの時代、「野性」で価値を探していく/「相手の悪手に嫌な顔をする」真意は?/盤上で、すべてを共有できるという特性/進化のプロセスを解析する研究者たち/コンピュータとともに未来の将棋を考える/指す者と、観る者の、これから


あとがき――「もっとすごいもの」を