まつもとゆきひろさんと二回目の対談をしました。

いずれ対談の全内容が「IT Pro」にアップされるので、そのときはまたお知らせしますが、この対談に関連するものを二つ、ご紹介しておこう。
(1) まつもとさんの日記

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で、日経BPで梅田さんとの二回目の対談。前回の対談の後「楽しかったのでもう一度対談したいですね」と言ったら梅田さんも乗り気になっていただいて実現した。

主に「ネットにつながった人々のパワーの活用」とか「オープンソース」とかの話が中心だった。

オープンソースの中の人」である私にとっての「当たり前」もやや外側にいる梅田さんにとっては「驚き」だったようで、こちらの一言にびっくりするくらい感心してくださったところもあった。

「梅田さんがこんなに聞き手に回るのを見るのは初めてです」と同席してくださった方もおっしゃったくらい、私が(早口で)しゃべっている。これがどうまとまるのか、楽しみである。
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前回の感想として、まつもとさんが「まだ話したりなかったなあ」「新しいことを読者に提供できなかったなあ」とおっしゃっていたので、今回は徹底的にまつもとさんの暗黙知を引き出そうと、聞き手に徹する気持ちで対談にのぞみました。予想外に話がはずみ、僕にとっても「目からうろこ」の発見が多々あったので、どうぞお楽しみに。

(2) 対談に同席された「経営とIT」サイト、谷島宣之編集長のコラム「私は「信頼できる」人か? 」
長文コラムの後半(2ページ目から3ページ目)は、我々二人の対談についての谷島氏の感想で、読みでがあります。一部を抜粋しますが、どうぞ原文にあたってみてください。

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 『ウェブ社会をゆく』の同じく冒頭に梅田氏は,「フロンティアを前にしたときの精神的な構え」について6点を列挙している。詳しくは同書にあたって頂きたいが,「個」としての精神的自立,自助の精神,パブリックな意識,などが含まれる。梅田氏はさらりと書いているが,これらの「精神的な構え」をとれるようにするのは難事であって,大げさに書くなら,明治以降の日本近代化における最大の問題である。

 一方,まつもと氏は1回目の対談を「好きなことを貫いています」という姿勢で通していた。温厚そうな風貌と語り口,「技術者の幸せ」という素晴らしい言葉を見聞きすると,オプティミズムそのものだが,ちょっと考えれば分かるように,精神的自立と自助の精神,パブリックな意識を持っていないと成し得ないわけで,実に厳しい道を歩んでいることになる。

 身もふたもない話,普段は上司や取引先に不満を抱きながら言われる通りに仕事をし,休日は仕事のことを一切忘れて楽しみを追求する,他人に要求はするが自分からは何もしない,という姿勢をとるほうが楽である。念のために書いておくと,後者の姿勢を非難する立場に筆者はない。ただ,梅田氏とまつもと氏が語っていること,やっていることが,困難かつ厳しい生き方であり,どうやったらそうできるのかを考えたいと思っている。これが,第2回目の対談に入れて欲しいと高橋に圧力をかけた大きな理由であった。
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対談の締めくくりに,まつもと氏がぽつんと「僕は自分の幸せを追求することには結構貪欲なんです」と言い,梅田氏は一瞬間を置いてから「それって深い言葉だねえ」と高橋信頼に話しかけた。

 楽しい仕事をするという自分の幸せを貪欲に追求する,つまりわがままを押し通すには,精神的自立と自助の精神が不可欠で,ところがそれを徹底していくとパブリックな活動につながり,全世界のRubyファンから「信頼できる」リーダーと認知される。こうした流れは,オープンソースやインターネットの世界に限ったことではない。信頼できるリーダーは皆,ある意味でわがままであり,しかもそれが人を引き付ける。聞こえが悪ければ,わがままを真摯あるいは一徹と言い換えてもよい。
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ちなみに前回の対談はこちらで。
「ウェブ時代をひらく新しい仕事,新しい生き方」(前編)
「ウェブ時代をひらく新しい仕事,新しい生き方」(後編)