毎日新聞夕刊「ダブルクリック」欄・第十回「次の十年」

毎日新聞火曜日夕刊コラム欄の第十回です。

十一月、母校の中学二年生二百五十人を対象に、インターネットの進化に関する特別授業をした。冒頭でアンケートをとったのだが、ほぼ全員がインターネットとグーグルを当たり前の道具として使い、半数以上がユーチューブ利用者だった。ブログ認知度もほぼ百パーセント。自らブログを書いている生徒も三十人くらいいた。
「次の十年」で、ネットの進化はさらに加速していく。知りたいと思う情報は、映像も含めてほぼすべて瞬時に手に入るようになる。何かを表現したければ、全世界に向けて自由に発信できる。ちょっとの努力で、世界中の誰とでもコミュニケーションが取れる。人類の叡智である世界中の過去の本も、ネットで検索して読めるようになる。
「知と情報に関する「もうひとつの地球」が生まれようとしている。リアルの地球と、新しい「もうひとつの地球」を行き来しながら、皆一人ひとり創造的に生きるんだよ」
私は生徒たちにこう言った。
これからのネットの進化を身体全体で感じながら、高校、大学へと進む彼らは、二〇一五年頃に社会に出る。そのとき四十歳以下の人は、すべて一九七五年以降生まれの「ネット世代」で占められる。情報の公開や共有についての新しい常識を持つ世代の台頭は、今よりも風通しのよい社会を日本にもたらすのではないかと、私は期待している。
授業を終えて数時間後に、生徒の一人から私に感想メールが届いた。
「今回、感銘を受けたのが僕たちは素晴らしい時代にいて、自分達世代が新しい世界を開いて行くということ、未来は創造していくものであること、です。好きなことを見つけて貫くことが自分を伸ばしていける、未来を創造していけると言って下さったので何か安心しました」
(毎日新聞2006年12月12日夕刊)