佐藤優「国家の罠」

久しぶりに「凄い」本を読んだ。僕は朝型人間なので寝るのが早いのだが、読み始めたらもうやめられず、読み終えたのは午前三時。おかげで体調は絶不調である。

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

間違いなく名著だ。産経新聞の書評
http://www.sankei.co.jp/news/050411/boo013.htm
にも、

五百十二日間もの拘置所生活と東京地検特捜部の取り調べ検事とのやりとりの克明な再現は圧巻である。

と書かれているおり、西村という検事と佐藤優のやり取りの克明な再現が本書の最大の山場だ。西村が語る「国策捜査とは何か」のくだり。そしてそれが「時代のけじめ」として必要なものなのであるという思想には圧倒される。
とにかく「凄い」本だ。間違いなく、ここ一年で読んだ本の中でのベストだ。
本書の終わり頃で、著者・佐藤は、西村の言葉として次のようなセリフを吐かせる。むろん本当に西村が語った言葉なのか、佐藤の心の中の言葉だったのかはわからないが、この言葉に佐藤の矜持が集約されている。

あなたや鈴木さんは2000年までの日露平和条約締結という目標のためにはどんな手段でも使っていいと考えた。もしそれが成功していれば、鈴木先生は英雄だったし、官邸入りし、あなたも恐らく鈴木さんと一緒に官邸に入っていただろう。しかし、平和条約はできず、しかも、あなたたちは政争に敗れた。だから捕まった。
あなたにせよ鈴木さんにせよ、目的のためには手段を選ばず、平気で法の線を越えるので、僕はいわば法に対するテロリストとして、カネや出世を動機とする連中よりもより悪質だと自分に言い聞かせている。あなたたちは革命家なんだ。それが恐らくあなたの考えていることともいちばん噛み合うのだと思う。(p348)