書かれなかった物語(の一部)

中央公論一月号に掲載された「著者に聞く」に加え、紙面の関係で雑誌には掲載されなかった「書かれなかった物語(の一部)」(Web版付録)が、あわせて中央公論ウェブ版となって公開されました。
「梅田望夫、『ウェブ時代をゆく』を語る」
です。

 実は、『ウェブ時代をゆく』はロールモデル思考法をテーマとする第4章から書き始めました。
 ロールモデル思考法を陳腐に書くと、当たり前のことだと流されたりしかねない。説得力を持って読者が受け止められるように、冒頭でも末尾でもなく、本の中央に置くことにし、4章の内容を納得してもらうためにその前後に何を書けばいいかを考えて全体の構成を決めていきました。
 執筆の際は、まず分量を考えずに、自分が誰をロールモデルにしてきたかを全部書きました。それだけで原稿用紙で百数十枚分にもなり、そこからぎゅっと絞っていった。主に「ロールモデルにしようと試みたものの、できなかった例」を削りました。たとえば、自分が大組織に勤めていたときの上司との葛藤などです。
 彼は北欧系のアメリカ人で、僕がこれまで会った中で随一の「できる」男。典型的な大組織向きの性格で、オールラウンドに何でもこなせる「CEOタイプ」でした。・・・・・・

聞き手の田中正敏(中央公論編集部)さんの巧みな誘導で、思いがけなく、これまでとは違った話題が広がり、じつは書いたけれど最後に削った話が、この本にはたくさんあるんだよね、という話に展開していった。それが、この「書かれなかった物語(の一部)」(Web版付録)につながりました。
「著者に聞く」本編の
「僕はよく楽観的すぎると批判されますが、問題意識としてはまったくオプティミズムではないんです」
とともにお楽しみください。