「ウェブ時代 5つの定理」いよいよ発売です

書店によって少し違いはありますが、「ウェブ時代 5つの定理」が明日(27日)または明後日(28日)から店頭に並びます。

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

刊行を記念して「5つの定理」(アントレプレナーシップ、チーム力、技術者の眼、グーグリネス、大人の流儀)のそれぞれのエッセンスを短い文章にまとめました。短期集中連載として、明日(27日)から5日間、産経新聞朝刊一面に掲載される予定です。どうぞお楽しみに。
そして刊行とほぼ同時に、文藝春秋特設サイトに、本書で取り上げた「ビジョナリーたちの名言」へのリンク集を公開する予定です。
また、3月15日(土)午後2時から八重洲ブックセンターで「講演会&サイン会」(講演タイトル「僕はこんな言葉に未来を見てきた---make the world a better place---」)をやることが決まりました。詳細情報はいずれ同サイトにアップされる予定ですので、参加ご希望の方はそちらをチェックしてください。
追記。
産経新聞一面短期集中連載は、ウェブ上でも読めます。
【ウェブ時代 5つの定理】その1 アントレプレナーシップ

「ウェブ時代 5つの定理」制作秘話と感想

2月27日刊行の新著「ウェブ時代 5つの定理」の文藝春秋・特設サイトができました。トップページに、2分ほどの短い音声メッセージを用意しましたので、是非聞いてみてください。

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!


この本は面白い仕事の仕方で作った本なので、そのプロセスをきちんと言葉にしておこうということで、制作秘話というページが用意されました。担当編集者の山本浩貴さんと編集ライターの阿部久美子さんの文章が掲載されています。まずは山本さんの文章から。

その第一段階、ビジョナリーたちの名言の選定と大まかな構成作業を、なんとすべてウェブ上で――「はてな」のワークスペースで行うと、梅田さんは指示してきたのである。
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この作業を開始するにあたって梅田さんが最初にアップした文章は「オプティミズムのシャワーを浴びた日々」というものだ。この本をつらぬくコンセプトの力強い宣言だった。
「不確実なもの(未来)を肯定的に断定しそれを前提に行動せよ。明るい前向きな言葉をシャワーのように浴びながら、その言葉が正しかったんだという事実を近未来史の中で突きつけられ続けてきた、そして今度は自分もそういう言葉を発したいなと思い――そういう言葉を発したり受けたりしながら長い期間生きることがどれほど精神的によいのかを、読者に伝えたい。それが、ぼくがシリコンバレーで身につけた『大人の流儀』なんだ」
期待に胸が高鳴った。だがここから、紙ベースの作業に慣れきったぼくらには想像を絶する難作業が待ち受けていた。
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ところがウェブの情報量に際限はない。梅田さんは昼夜を問わず長年温めてきた名言から最新のビジョナリーの知見まで、論文や記事やインタビューの抜粋などをすさまじい勢いでアップしはじめた。しかも、そのほとんどは英文である。さらにその名言に対する知見や思考のフックとなるビジョンが日々書き加えられていく。
それらに日々目を通しフィードバックするのは、相当ハードで、でも楽しい作業になった。
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そして阿部さんの文章「「質問によって走らせる」本づくり」から。

梅田さんは、「問う人」だ。
通常、著者は今回の本で何を表現したいかを熱く主張する。
私たち編集サイドは聞き役に回ることが多い。ところが、梅田さんは違った。ディスカッション中、頻繁に質問をする。
「あなたは実名を出してそれを書ける?」「その抵抗感はどうすればなくせるんだろう?」「なぜそこに違和感を覚えるのだろうか?」という具合に……。
しかも、それに対するこちらの答えを否定しない。著者なのだから、意にそぐわない点は否定して、自分はこういう本にしたいのだと喝破してくれていいのだ。が、終始笑みを浮かべながら聞き、対話し、そして問う、また問う……。
 そのうち、ふと気がついた。梅田さんが答えを欲しているのではないことに。
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全文は文藝春秋サイトでどうぞ。
ところでこの本は、僕が「いつか書きたい」と漠然と思っていたことが形になったものです。僕はたくさんの本を量産するタイプではなく、一冊一冊おそろしく時間をかけるので、「ウェブ進化論」が売れ出して、たくさんの出版社から依頼が殺到したときには、もう既にしていた約束を果たすだけで精一杯だったので、新しい依頼をすべて断らざるを得ませんでした。
一人だけの例外が、「まえがき」にも登場した文藝春秋の山本浩貴さん(1976年生まれ)でした。彼は20代半ばで齋藤孝さんの「三色ボールペンで読む日本語」というベストセラーを作ったというトラックレコードを持つ、優秀でセンスのいい編集者でした。彼とはメールをもらうまで、まったく面識がありませんでしたが、メールの文面が、明らかに他の人たちとは違った光彩を放っていたため、一度電話で話し、そして会ってみることになりました。そこから先の話は、彼の文章に書かれている通りです。
この二年間、モノを書くことを最優先に時間を使ってきましたが、この三月末を期に、書く仕事はしばらくスローダウンして別のことに時間を使います。「ウェブ進化論」以来、濃密し凝縮した時間を過ごしたので、書き下ろし作品として、四十代でできることはすべてやったかな、この三冊でいいかな、という気持ちでいます。
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書) ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書) ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

新著「ウェブ時代 5つの定理」2月27日刊行

2月27日に新著「ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!」(文藝春秋刊)が刊行されます。
アマゾン、紀伊国屋等で予約が始まりました。
第一読者である妻の読後の第一声が「なんか、いつもと違うことが書いてあったね」だったので、これまでに僕の本を読んでくださった読者の皆さんにも、きっと楽しんでいただけるのではないかと思います。
ウェブ進化論」以来、この二年間はモノを書くことに没頭してきたのですが、これが最後の単著「書き下ろし」作品です。
どう「書き下ろし」たかについては、今週中に文藝春秋社サイトに本書の特設コーナーができ、そこで「この本はどうやって作ったか」の舞台裏の話が本書担当編集者の山本浩貴さんなどによって書かれる予定なので、その詳細はまた後日ご紹介したいと思います。

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!


 はてな創業者・近藤淳也に本書の草稿を読んでもらったとき、

数学の公式集みたいな本ですね。
創造的なイノベーションを生んで成功するための公式集のように思いました。

という感想をもらい、書くときにはまったくそんなふうに意識していなかったのですが、なるほどなと思いました。それで「定理」という言葉を比喩としてタイトルに入れてみよう、というインスピレーションが湧いたのでした。
 読者の皆さんが心の中にゴールとして持つ仕事上の夢やライフワークの達成(自らの「最終定理」の証明)に、でき得ればこの「5つの定理」を応用してもらえたら嬉しい。そんな思いをこめて、「ウェブ時代 5つの定理」というタイトルにしました。
 どんな本なのかはまず「まえがき」を読んでいただくのがいちばん早いので、「まえがき」の全文をここに掲載します。

 まえがき ――― 私の勉強法

 未来を見通すことなど誰にもできないが、こうすればクリアに想像できるのか。

 世界の成り立ちなど誰にもわからないけれど、こうすれば見晴らしがよくなるのか。

 十六年前、アメリカにやってきたばかりの私は、「ある種の人々」が英語で発する切れ味の良い言葉を読み、その言葉の背景にある思考や発想に寄り添って深く考えることで、それができるのだ、という発見をしました。

「ある種の人々」とは、テクノロジー業界の最先端を走る起業家や投資家や、「普通の人」よりも何歩も先をゆく天才的技術者、日々の濃密な経験から世界を俯瞰して眺めている企業経営者、複数の専門性を究めた大学教授といった人たちの中で、とりわけ言語表現能力が高い人々のことです。

 特にシリコンバレーでは、そういう人々がビジョナリーと呼ばれ、オピニオンリーダーとしてたいへん尊敬されていることを知りました。彼ら彼女らの切れ味のよい言葉の数々が、多くの人にインスピレーションを与えるからです。

 そういう発見をして以来、私はひたすら、ビジョナリーたちの切れ味のよい言葉を探しては考える、ということをずっと繰り返してきました。日々の仕事での経験にビジョナリーたちの言葉を照射しては、変化の予兆をとらえようとしてきました。これが、今も続けている私の勉強法の核心なのです。

 しかし素晴らしい言葉にはそう簡単には出合えません。たとえばコンファレンスに終日出席してもわずか一つとか、何冊か本を読んでもやっと二つとか、いくつインタビュー記事を読んでも全く見つからないとか、そんな試行錯誤を繰り返しながら、切れ味の良い言葉が、そこかしこに落ちているものではないことも知りました。とにかく数当たることが何より大切で、大量の言葉に接することなしにはこの勉強法は成り立たないので、このことに費やす「時間の優先順位」を高くして、たくさんの時間をなんとか捻出してきました。

「毎朝四時とか五時に起きて三時間も四時間も何をやっているのか」、「一万冊以上の本を買い集めて、どうやって読むのか」とよく尋ねられるのですが、私はここ十数年、莫大な時間を投資してこのことをやり続けていたのです。

 私は、ビジョナリーたちの言葉の探索を、砂漠での砂金探しになぞらえています。人々が発する膨大な言葉を、私自身の感性のふるいにかけ、最後まで残ったものが文字通り「金言」で、それが私の思考の核となってきました。

 これまでの著作の中でも、私は蓄積してきた大切な金言のいくつかを隠し味のようにして文章の中に織り込んできました。この勉強法についてはあまり公に話してこなかったのですが、「何かあるぞ」と、私がビジョナリーたちの金言を集めていることに気付いた人が一人だけいた。その人が本書の担当編集者、山本浩貴さん(一九七六年生れ)でした。

「これまでに集めた金言を軸に、一冊の本へと構造化するには少なくとも二年はかかるよ」

「わかりました。でも絶対に二年で出しましょう」

 そんな会話が発端となって、この本を生み出す作業が始まりました。

 この本をつくる仕事を進めていくうちに私は、なぜ自分はこんな砂金の探索に大切な人生の莫大な時間を費やしてきたのだろう、と自問することになりました。金言とは、その言葉の切れ味ゆえに、世界の成り立ちがくっきりと浮かび上がってくるものだったり、未来の姿を想像する補助線になったりするわけですが、それ以上に、前を向いて生きる希望やエネルギーを私に与えてくれていたのだ、ということに気付きました。この言葉をエネルギー源にして、未知を楽しむ心を、知らず知らずのうちに私は養ってきていたのでした。

 言葉の力はおそろしいものです。毎日毎日、心が萎えるような言葉をシャワーのように浴びるのと、オプティミズムにあふれた未来志向のわくわくする言葉に勇気付けられるのとでは、同じ人でもまったく違う人生が広がる。そんな思いを改めて強くしました。

 今、私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、「時代の大きな変わり目」を生きています。未来をすべて見通して安心することなど誰にもできませんが、変化の本質を見極め、それを行動に結びつけ、走りながら考えて軌道修正をかけていけば、かなりの確率でサバイバルできるものです。

 現代社会で働くすべての人が、仕事に活路を見出していくうえで座右に置き、仕事のさまざまな局面で開き、この金言を何度も繰り返し実際に使えること、生きるヒントを得られること、仕事に活かせること。それを、本書は目指しました。そんな観点から、未来を切り開く言葉を選び、「5つの定理」として分類・整理し、構造化しました。

 第1定理は「アントレプレナーシップ」。不確実な未来を楽しむ精神を、私たちはいかにして養うか。自らの未来を創造するうえでいちばん大切な精神的な構えについての話です。

 第2定理は「チーム力」。どんな優れた人も、一人では何もできません。自分にできないことができる人たち、自分にない能力を持った人たちと、どうチームを組んでいかに仕事をするか。複雑な現代社会を生き抜くエッセンスがここに詰まっています。

 第3定理は「技術者の眼」。二十一世紀のビジネスは、科学と技術を抜きにして考えることはできません。文系、理系を問わず、最先端技術の意味づけと、それを牽引する技術者の思想や発想をしっかりと理解する必要があります。

 第4 定理は「グーグリネス」。グーグリネスとは、ウェブ時代をリードするグーグルという会社の気質やグーグルらしさを表す言葉です。第1定理から第3定理までのエッセンスが、高いレベルで統合された最新かつ最良の実例として、グーグルの経営・組織・文化における独自の論理を見ていきます。この会社の在りようには、ウェブ時代をサバイバルする知恵も凝縮されています。

 そして第5定理は「大人の流儀」。「時代の大きな変わり目」においては、異なる価値観を持つ世代の間で軋轢が起こりやすくなります。世代間の不毛な対立ではなく、世代間の融合や相乗効果を追求しなければ、未来の創造はできません。そのときに成熟した「大人の側」こそが、どのように振る舞ったらよいのか。私がシリコンバレーで十数年にわたって学び、そして今、実践しようとしてもがいている「成熟した個としての仕事や生き方のスタイル」がテーマです。

 そして最後にもうひとつ。

 本書で取り上げる言葉の数々は、皆、英語です。日本語に訳しても、なんとか原文の切れ味が残るよう、翻訳家の上杉隼人さんのご協力をいただいてベストを尽くしたつもりです。ぜひ英文も読み飛ばさずに味わっていただきたいと思います。

 本書に出てくる英文の多くは、現代ビジネス社会の最前線で生きて使われている「かっこいい英語」です。読者の皆さんが、仕事上の勝負を賭けて英語で何かを言おうとするとき、本書の金言から適切な文章を選び、自分の仕事に合わせて動詞や固有名詞を置き換えると、素晴らしい文章が自動的にできあがります。それを覚えてしまえば、あなたもスティーブ・ジョブズになれる。これは私のサバイバル英語術の一つでもあるのです。

 さて、前置きはこれくらいにしましょう。では、未来を切り開く、ビジョナリーたちの切れ味のよい言葉の数々を、どうぞお楽しみください。

 この本をつくる仕事は「ウェブ進化論」を出版してまもなく始まりましたので、足掛け三年の仕事でした。その間に「ウェブ時代をゆく」を同時併行で書き下ろしていたのですが、まったく違うテーマとはいえ、二つの本を同時に、というのは、とても難しかった。そこで、二つの本の文体を変えることにしたのでした。
 ですから、そう意識して作ったものではないのですが、「文体の選び方が重要」という齋藤孝さんの指摘にもあったように、話し言葉の文体で出来あがったこの本のほうが、若い世代の多くの人たちにとって、取っ掛かりのよいものに仕上がったと言えるかもしれません。

 目次抜粋(目次の一部)は次の通りです。2月27日の発売をどうぞお楽しみに。


まえがき――私の勉強法


第1定理 アントレナーシップ
私を起業へと駆り立てた言葉/起業して成功するための条件とは?/"第三のリンゴ"が私のアントレナーシップに火をつけた/変化の予兆を感得せよ/ビジョナリーとの出会い/失敗といっても「スポーツで負ける」くらいのこと/最高の倫理観をもった者が社会を牽引する


第2定理 チーム力
人についての黄金則/ベンチャー経営に必要な三要素/リーダーシップは料理のレシピ本のようにはいかない/好きな人と働くことが原動力/全員イエスでなければ採用しない/Aクラスの人はAクラスの人を連れてくる/自分で動く、贅肉のないチームづくり/データで判断し、行動する


第3定理 技術者の眼
技術者たちの反骨精神――テクノロジーで権威と対抗する/技術者はものを介して考える/変化の節目で何に賭け金を置くか/テクノロジーで「百倍よくなる」未来を愛する/PCのアイコン、アップルの復活劇/プロダクトを何で差別化するか/アントレプレナーはみなマイクロマネジャーだ/変化を見抜く者が生き残る


第4定理 グーグリネス
グーグルの第一倫理――「邪悪であってはいけない」/グーグル採用術――「グーグリネス」はあるか?/一つのアルゴリズムで完璧な答えを返す/世界中からグーグルに人材が集まる訳/タイムマネージメントについて/みんなの合意が基本――マネジメントの3つの黄金則/混沌さの中に組織のパワーは宿る


第5定理 大人の流儀
日本語圏独特の匿名文化/自分は何者なのか――フェイスブックの台頭/「パブリックな意識」がネット空間を進化させる/人々の善性を信じよ/世の中をよくしたい? ウォールストリートを興奮させろ/苦しいときこそ、大人が社会を鼓舞する/若い人の流儀を尊重する/愛するものを全うする


あとがき――私の最終定理